「軽度者とIADL」については、まず要介護度別認定者における軽度者の割合が約7割であることに触れた上で、「この7割のうち、フレイルの要素を持っている方が約半数を占めます。この方々は適切に関われば治ります。そこをちゃんと見極めるのがデイケア、通所リハビリテーションの役割です」と、軽度者の在宅生活を支えるためにデイケアの役割が重要であることを強調。続けて要支援者のほとんどは、身の回りの動作は自立しているが、買い物などの生活行為の一部がしづらくなっていることを示すグラフを掲示し、「ADLはおおむね自立、けれどもIADLは軒並み低下していますが、ADLのうち入浴と整容動作は低下が早いです。これは理由があります。お風呂は裸ですし、多い工程を実行しなければなりません。整容動作は巧遅動作、細かい器用な動作と両手の協調動作が必要ですのでやはり低下が早いです。したがって入浴動作と整容動作をちゃんとアセスメントしていくと、ADLの負の連鎖を防ぐことができます。そして今日言いたいのは、IADL。軒並み低下していますが、ここには落とし穴があり、安易に代替えが効いてしまうので、本来できることも代替えし、『できていない』として『低下している』とされているデータも一定割合含まれています。本当にできなくなった方ばかりではありません。できているのに置き換えられているためデータが下がっている場合があるということです。つまりIADLはしっかりと能力を見極める。できるのであればしっかり目標化することが大事です」と注意を促しました。
フレイルに関しては社会的フレイル、身体的フレイル、心理的・認知的フレイルという3種類の多面的なフレイルがあることを踏まえ、フレイルの機序について「老化→併存症→IADL障害→認知・心理障害→社会的孤立→身体的フレイル」というスライドを示しながら「身体的フレイルが出る前段としてIADLの障害が出ると言われています。ここが入口ですので、軽度者についてはここをちゃんとみておくことが大事です。つまり身体的フレイルが出ている場合は、すでにIADL障害が起こっていて、社会的フレイル、心理的・認知的フレイルも起こっているというのが機序のようです。ですからもっと前の段階でIADLに触れておくことが大切です」と言葉を重ねました。
(つづく)