開催しました!「九州大会inみやざき」(その22)
市民公開講座の二人目の講師、琉球大学病院地域・国際医療部の臨床倫理士、金城隆展先生による「自分のものがたりとして考えるACP」。講演は「2.物語を共に紡ぐ」、に移りました。
まず、ノートルダム大学教授で哲学者、アラスデア・マッキンタイアが説いた「私たちは『物語る動物』である」をタイトルにしたスライドを提示し、「①誰でも物語れる」、「②物語ることで人生や経験を意味づけている」、「③自己アイデンティティを形成している」、「④他者の物語も一緒に紡いでいる(共同著作)」の4つを列挙しました。このうち「②(私たちは)物語ることで人生や経験を意味づけている」そして「④他者の物語も一緒に紡いでいる(共同著作)」の2点を念頭に置くよう参加者に言いながら、動画による症例紹介がありました。
病気のため一度は下肢切断が決まった高齢女性の患者。家族は同意したものの、話し合いを重ねる中で、本人の気持ちを尊重し、保存療法を選択した結果、患者は切断しなくても良い状態まで回復。医師が「私は病気をみていた。本当なら病気をわずらった患者をみなければならなかったのに」と省みた後、「ACPは患者さんの意思を尊重することが大切です。患者さんの尊厳有る生き方を実現することに力を尽くしていきましょう」というナレーションで動画が結ばれたのを受け、金城先生は「患者さんらしさを表す選択の背後に物語があります。その物語を介して患者さんらしさは何なのか、患者さんの思いは何なのかを理解し、治療に反映することができます。ACPで大切なのは、『何を決めたのか』の結果ではありません。何度も話し合う機会を持ちながら、患者さんの物語を介してその人をよく知っていくこと。これが本当に、本当に大事なのだということをお伝えしたいです」強調。さらに「ACPで大事なのは『何をする、しない』という事前指示ではありません。『この人はどう生きたいのか、何を希望しているのか、何が好きで何がきらいか、この人はどういう人なのか』を繰り返し話し合っておくことが、必ず役に立ちます。本人が話せなくなったとき、周りの人が推定することに役に立ちます。そのために私たちは準備をします。ACPとは準備をするということです。重要なのは結果、結論ではありません。周りの人たちが本人のことを代弁できること、一緒に患者さんの物語を共同著作できるかどうか、ここが問われているということなんです」と言葉に力を込めると、その熱気は会場中に伝わりました。
(つづく)