老健みやざきブログ

感染症対策学びました(看護介護部会:その5)

2014年11月7日 | 協会活動報告

 接触(経口)感染への対策について話し始めた西田先生。「接触によって身体の表面に病原体が付着しただけでは感染は起こりません。身体の中に菌は入っていません。病原体のついた手で口や鼻、眼をさわることによって病原体が身体の中に入って感染します。ということはどうすればいいかというと、とにかく手洗いです。接触感染対策にとって最も重要で基本となるのは手洗いです」と手指衛生の重要性を強調し、「石けんとアルコール1押し(3cc)を組み合わせることで、効果は1万倍にもなります」と付け加えました。なお、健康な皮膚は強固なバリアになるものの、皮膚に傷がある場合などは、そこから病原体が侵入し、感染する可能性もあるため、手袋の着用を検討してほしいとのことでした。

05001IMG_8763.JPG

 この手指衛生をいつ行うかという事については、「1処置1手洗い」と前置きし、スライドに次の5項目を示し、その順守を訴えました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【手指衛生が必要な5つのタイミング】

(1)患者に触れる前(入室前・診察前)

(2)清潔/無菌操作の前〈例:ライン挿入、創傷処置など(手袋着用直前)〉

(3)血液/体液に触れた後〈例:検体採取、尿・便・吐物処理など(手袋を脱いだあと)〉

(4)患者周辺の環境に触れた後〈例:ベッド柵、リネン、モニター類〉

(5)患者に触れた後(退室後・診察後)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 次に感染性胃腸炎について、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などの細菌や、ノロウイルスなどのウイルス、そしてクリプトスポリジウムなどの寄生虫といった色々な原因があるとしながらも、「やはりノロウイルス、これが最強です。ノロウイルスの対策ができていれば他のものもだいたい防ぐことができます」とし、ノロウイルスに関する説明が始まりました。

 「非常に小さく消し去るのが大変。カキなどの二枚貝を生や加熱が不十分な状態で食べると感染し、人の腸で増えるため、85度から90度で、1分半以上の加熱が必要です。さらに、小さいくせに感染力が極めて強く、10個から100個といった少量のウイルスで感染が成立しますが、排泄物の中には1グラムに100万個以上もあります。またもう一つのやっかいな問題は、ノロウイルスを持っていても症状が出ない人がいるということです」といった西田先生の具体的な説明に、受講者は身を乗り出して聞き入っていました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その4)

2014年11月6日 | 協会活動報告

 「施設における感染対策」に関して、まず感染予防の三原則として、「”感染源”、”感染経路”、そして”感受性者”の3つが揃わないと感染は成立しません」と、それぞれ感染源に対しては治療や隔離、感染経路には手洗いやマスク、感受性者には体調管理やワクチンなどの対応法をおさらいした西田先生。「個人のレベルで終わっている限りは特に問題ありません。何が問題かというと”感染経路”、つまり周りに広げるところが問題です。感染源であってもちゃんと治療すればいいし、感受性者でもちゃんと体調管理やワクチン接種で防げます」とし、感染経路の対策の重要性を強調しました。

 そして感染を未然に防ぐ対策の1つである衛生管理について、次の6項目を示しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)適度な温度、湿度の管理

(2)冷暖房、加湿除湿器の定期的な清掃

(3)環境の清掃

(4)共用具の衛生管理

(5)ドアノブや手すり、スイッチなど不特定多数が頻回に触る場所はアルコール消毒を

(6)汚染が予想されるときは防護具(マスク、ディスポエプロンなど)を使用

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ノロウイルスなど消化器疾患に多い接触(経口)感染、呼吸器疾患に多い飛沫感染、そして結核や麻疹、水痘などの空気(飛沫核)感染という3種類の感染経路について述べた西田先生。「空気感染の怖さというのはどういうものかというと、例えば僕が結核を発症したとしましょう。するとこの会場の1番後ろに座っている方にも感染のリスクがあるということです」と最後列を指さすと、96人の受講者で埋まった会場には緊張が走りました。これに続き「ところがインフルエンザだと前から23列までの人が危ないということになり、接触感染だと(触れなければ)安心だということになります」との説明に、受講者はメモを取るなどして聞き入っていました。

04001IMG_8740.JPG

 これらの感染経路対策の各論に入る前に、病原体の感染と伝播のリスクを減少するために行われる標準予防策(Standard precautions)の考え方(:全ての患者の血液、汗を除く体液、分泌物、排泄物、健常でない皮膚、粘膜は、感染性があるものとして対応すること)に言及した西田先生。接触(経口)感染への対策から説明を始めました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その3)

2014年11月5日 | 協会活動報告

 感染対策マニュアルについて「定期的な見直しが必要です。マニュアルはあるけど古くなってしまっていると、『何のためのマニュアルか?』となります。皆さんも施設に帰ったら、定期的に見直されているかチェックをしてください。そしてそのマニュアルがどういったものか、その内容を皆で共有して下さい。”絵に描いた餅”ではいけません。一連の具体的な手順がないと新人はわからないし、何かあったときに指針がないと船は沈みます。もちろんそれが間違っていてはおおごとです」と警鐘を鳴らした西田先生。会員老健施設や特養などからの受講者96人を前に、「高齢者施設における感染症リスク」として次の6項目をスライドに示しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)毎日長時間の集団生活、レクなど濃厚な接触も

(2)マスクや手洗いが十分にできない人も

(3)感染症にかかりやすい(免疫が弱い)

(4)重症化しやすい(誤嚥のリスクも)

(5)脱水をおこしやすい(成人と比較して体内の水分保持能が低下)

(6)結核の既感染者が多い

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「皆さんの施設にはどのようなリスクがあるでしょうか?」と満席の会場を見渡しながら尋ねた上で、「病原体によって潜伏期間が異なりますが、感染してから病状が出るまで時間がかかりますし、症状がおさまっても、インフルエンザやノロウイルスなど、ウイルスを排出していることがあります。また『不顕性感染』といって、感染していても症状がでないことがあり、これが感染症の難しさです」と注意を促しました。

03001IMG_8759.JPG

 そして感染症対策の基本として、「微生物は無限に存在します。無菌の環境はあり得ません」前置きし、「その中で健常者や大人においては問題とならない病原体でも、免疫が弱くなった高齢者では感染すると発病しやすくなります。それでは高齢者を感染症から守るためにはどうすればよいでしょうか?」と、今回の研修会のメインテーマである「施設における感染症対策」について説明を始めました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その2)

2014年11月4日 | 協会活動報告

 研修はまず、最近の院内感染の事例紹介から始まり、結核や感染性胃腸炎、多剤耐性緑膿菌、セラチア、多剤耐性アシネトバクターなど、県内外における患者と職員が集団感染し、死亡者も出た事例などを示した西田先生。その中で療養型病院において患者と職員が集団発生した感染性胃腸炎のスライドを示しながら、「感染性胃腸炎は毎年流行しますので、発生することはあります。発生させない努力も必要ですが、発生してしまった時の対応の方が実は大事です。発生はしても封じ込めができるということがポイントです」、「(療養型病院では)自力で動ける患者は少ないはずです。ということは、職員が媒介ということになります」、「初動が一番大事です。この事例では最初の患者(初発患者)が出て34日後に急に増え、終息までに1か月程度かかりました」と話し出すと、会場には緊張した空気が漂い始めました。

02001IMG_8720.JPG

 医療法施行規則(第1条の11)には(イ)院内感染対策のための指針の策定、(ロ)院内感染対策のための委員会の開催、(ハ)従業者に対する院内感染対策のための研修の実施、(ニ)当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策の実施・・・などを記した院内感染対策が定められていることを紹介し。その中で院内感染対策研修については、「チームで行うことが大事です。1人のミスがみんなのミスにつながります。研修はいろいろな知識を見直す良いチャンスです。皆さん忙しいでしょうが、定期的に行うことが感染対策への意識を向上する上で大事です。新人が入ってくる4月、そして感染症のシーズンに入る前に行うと理想的ではないでしょうか。そして『どういう研修をやったか』ということをファイリングしておくと、振り返りの資料になります」とその必要性を強調しました。

 また感染症の発生状況報告に関して、「発生自体はどうしても不可抗力というところがあります。発生してしまったとしても、その後の対応が大事です。『報告しておこられる』という問題ではありません。保健所としても重大な事象は報告してもらって、アドバイスができればいいと思います。保健所も一緒に対策を考えていきたいと考えていますので、気軽に相談してください」と呼びかけました。

02002IMG_8803.JPG

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その1)

2014年11月3日 | 協会活動報告

(公社)宮崎県老人保健施設協会看護介護研究部会は1025日、宮崎市のJAアズムホールで研修会を開き、施設における感染症対策について学びました。

01001IMG_8750.JPG

同部会はでは67日、褥瘡(じょくそう)の予防および治療法に関する研修会を開いており、今回が今年度第2回の研修会となりました。この日は会員施設や特養関係者など96名が参加しました。開会にあたり、同部会の上村久美子委員長は「高齢者の施設で働いていると、特にこれからの時期は感染ということに対して神経質に向き合っていかなくてはなりません。それぞれの施設で感染対策をしているとは思いますが、職員への意識付けを行い、職員が正しい知識を身につけてやっていくことが大事になります。今日はしっかり勉強して、各施設での感染対策に役立てて下さい」とあいさつしました。

01002IMG_8699.JPG

(↑上村委員長)

講師には宮崎県福祉保健部健康増進課兼小林保健所の主査で医師の西田敏秀先生をお招きしました。西田先生は鹿児島県私立ラ・サール学園高等学校から熊本大学医学部に進学。医師免許取得後は同学部付属病院や球磨郡公立多良木病院、公立玉名中央病院、そして宮崎県延岡保健所などで勤務された後、現職でご活躍中です。日本医師会認定産業医の資格を持ち、日本公衆衛生学会および日本結核病学会に所属されている西田先生は、宮崎大学の非常勤講師も務められており、この日はご多忙の中を縫ってお越し下さりました。

01003IMG_8722.JPG

(↑西田敏秀先生)

 「今日は長時間の研修ですが、感染症対策の基本から話していきますので聞いていただきたいと思います。また資料もたくさん用意しています。持ち帰って今日の研修の振り返りに使っていただくとともに、施設で職員の皆さんにフィードバックをしていただいて、それぞれの施設における感染対策がレベルアップすることを望んでいますので、よろしくお願いします」と、西田先生はにこやかに話し始め、研修会が始まりました。

(つづく)

今年もあと2ヶ月

2014年10月31日 | 雑談

 早いもので、金曜日で10月も終わり。平成26年も残り2ヶ月となってしまいました。今年を振り返るにはまだ早いか、それとも早くないか・・・?

 色々なニュースがありましたが、青色発光ダイオードを発明、実用化させた赤崎勇さん、天野浩さん、そして中村修二さんのノーベル物理学賞受賞は2014年を明るく照らす朗報となりました。

 1031日は「ガス記念日」。1872年(明治5年)のこの日、日本に初めてガス灯がともったことにちなんで定められたそうです。

 神奈川県警加賀町警察署のホームページに「日本初ガス灯」というページがあり、当時のものを復元したガス灯の写真が紹介されています。そこには次のような紹介文が載っていました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「文明開化の象徴として全国に先がけて横浜にガス灯がともされました。柱部は英国グラスコー市から輸入し、灯具は日本職人により製造されたといわれています。最初の点灯場所は大江橋通り・馬車道通り・本町通りであり、一年後には市内主要道路のほとんどに設置せれました。

 当時、文明開化の世とはいえ人々の驚きは大変なもので、『横浜ガス史』によれば『キリシタンの魔法である』との流言まで飛び、恐れをなすものや心配して騒ぐものが少なくなかったと言われています。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 今から142年前のこと。それまでは日が沈むとほぼ真っ暗になっていた横浜の街が、ガス灯の明かりで照らされだしたものですから、それはそれは大騒ぎになったことでしょう。

 そして時は現代。青色発光ダイオードのおかげで、私たちの暮らしは劇的な変化を遂げたといっても過言ではありません。ガス灯発祥の地、横浜の人たちもこの吉報を喜び、ひょっとすると「街の灯りがとてもきれいねヨコハマ、ブルー・ライト・ヨコハマ」と、いしだあゆみさんの名曲を歌って祝福しているかも・・・。

 横浜と言えば、先日も紹介しました通り、平成2792日から4日にかけて「第26回全国介護老人保健施設大会神奈川in横浜」が「高齢者が輝く未来へ  お洒落に!スマートな連携!」の大会テーマで開催されます。大会ポスターもアップしていますので活用して下さい。そして大会へ参加された暁(あかつき)には、日本最初のガス灯を見に行ってみるのもよいかと思います。「歩いても 歩いても 小舟のようにー」と歌いながら。

来る前よりも幸福に

2014年10月30日 | 雑談

 「あなたのところに来るひとをだれ一人、来る前より幸福にせずに立ち去らせてはいけません。」・・・このように言ったのはマザー・テレサ(「人生の指針が見つかる『座右の銘』1300、別冊宝島編集部 編、宝島社」)。彼女の慈愛の深さはもちろん、そのために貫いた信念の強さには敬服するばかりです。

 来る前より幸福にすること、それは老健施設の使命とも言えるでしょう。公益社団法人全国老人保健施設協会が毎月発行している協会機関紙「老健」には、「介護老人保健施設の理念と役割」が載っていますが、そこには「介護老人保健施設は、利用者の尊厳を守り、安全に配慮しながら、生活機能の維持・向上をめざし総合的に援助します。また、家族や地域の人びと・機関と協力し、安心して自立した在宅生活が続けられるよう支援します」と記されています。

 利用者の意思と希望を尊重し、望ましい生活が送れるよう、スタッフが連携してチームケアを提供することはもちろん、家族や地域の人びと、そして諸機関と協力していくことが肝要だと思います。来る前よりも幸福になれるように。

DSCN8428.jpg

最古のふんに興ふん

2014年10月29日 | 雑談

 1017日の朝日新聞に「脊椎動物
国内最古のふん」という記事がありました。「日本最古となる脊椎動物のふんの化石が、宮城県南三陸町の約24700万年前の地層からみつかった」のだそうです。

 記事によると24700万年前というのは生物の大量絶滅の500万年後にあたり、すでに生態系が回復していたことを示す国内最古の発見で、その地層について「生態系回復の歴史を解明する重要な拠点になる」という関係者のコメントも紹介されていました。

 たかが”ふん”、されど”ふん”、だと思いました。「排泄物」と言い捨ててしまえばそれまでのことですが、現在地球上でこのように生きている私達が、24700万年前という気が遠くなるようなはるかな昔に排便したこの脊椎動物と、何らかの形でつながっているかもしれないと思うと、感慨深いものがあります。地球上の生物はこれまで何度か大量絶滅とそこからの回復を繰り返してきたそうですが、その謎がわかっていくことで、生命の神秘、そして命の尊さに対する思いがより一層深まることではないでしょうか。

 そして私達、老健施設で働く者にとっても「ふん」・・・ではなく「排泄」ケアがすこぶる重要なのは言うまでもありません。「見て見ぬ振り」なんてもってのほか。他職種が連携し合い、しっかり観察、記録、対応することが重要です。もちろんそのために幅広く、そして深い知識と技術も必要です。適切な排泄ケアが行われているか否かが、命を左右すると言っても過言ではありません。

 排泄ケアに関しては医療、看護、介護、福祉機器、リハビリテーション、栄養・給食など各方面で研究・開発が進められています。各老健施設においても様々な取り組みの成果が発表されており、今後ますます排泄ケアの質は向上していくものと期待されます。そしてそれは後々私達自身が受けるであろう排泄ケアにつながるもの。24700万年先とは言いませんが、10年後、20年後、30年後、・・・の排泄ケアが、今よりもっと良いものになっているよう、それぞれにおける現在の取り組みの手綱を緩めてはいけない・・・と思った記事でした。

岩手の次は横浜大会!

2014年10月28日 | 協会活動報告

 1015日から17日にかけての3日間、「第25 全国介護老人保健施設大会 岩手」が盛岡市民文化ホール(マリオス)ほかで盛大に開催されたことは、先日紹介した通りですが、来年、つまり平成2792日から4日にかけては、「第26回全国介護老人保健施設大会 神奈川 in 横浜」が「高齢者が輝く未来へ  お洒落に!スマートな連携!」の大会テーマで開催されます。

 既に現在、大会関係者がその準備に取りかかっており、Future when elderly people shineと銘打った大会ポスターも完成しており、当協会にも送られてきました。こちらからダウンロードしてご活用下さい。

 先日も述べた通り、日々の業務の中で感じる疑問や問題点には、研究発表の題材がたくさんありますし、それらを研究する中で、疑問が解決し、問題が解消されることは即ちケアの質の向上そのものであることはもちろん、より良い研究発表にもつながります。さらに大会テーマにもある通り、「高齢者が輝く未来」に向けて、その扉を開く鍵となるかもしれません。

是非来年はその成果を披露し合いましょう。横浜でお目にかかるその日を心待ちにしています。

感染症予防研修会開きました(看・介部会:速報)

2014年10月27日 | 協会活動報告

(公社)宮崎県老人保健施設協会看護介護研究部会は1025日(土)、宮崎市のJAアズム別館202研修室で高齢者の感染症予防対策研修会を開きました。講師に宮崎県健康増進課感染対策室の西田敏秀先生をお招きし、感染症に関する現状や具体的な予防法などについて学びました。

IMG_8750.JPG
この研修会の詳しい模様は後日連載する予定ですのでお楽しみに。

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

最近の投稿

アーカイブ

カテゴリー

老健みやざきFacebook

TOPへ