第13回研究大会開きました(その4)

2016年11月24日|

001bq8v6076  「(5)認知症の治療」については「薬3割、環境7割」と示した上で、薬が万能ではないこと、そして生活習慣の改善や知的活動・運動などの「防御因子」を増やすことが最優先であると倉増先生は指摘しました。その上で認知症に用いられる治療薬(アセチルコリンエステラーデ阻害薬、メマンチン)について、特徴や効果を説明し、注意点として(a)薬の保管は・管理と定期的な服薬ができること(本人または介護者が行う)、(b)薬の効果と副作用の観察が行えること(本人が独居の場合は訪問看護や訪問介護などを利用して適宜支援と確認ができる)、(c)定期的な受診と服薬指導が受けられること・・・の3つを上げました。

  「(6)認知症への対応」では接し方の基本として「思い出せない、不安、自分は悪くない」という患者さんの気持ちに対し、「できないことを無理強いしたり、しつこく注意したり、叱ったり怒ったり必要以上に『病気だから』と強調するのではなく、『忘れる病気』であることの認識をもち、叱ったり怒ったりしない。できないことを見極めて支援する。五感に働きかける、本人を頼る」ことが重要であることをスライドに提示。これに続いて「同じ話や行動を繰り返す」、「妄想」、「攻撃的言動」、「失禁、不潔行為」などといった言動に対する適切な対応を解説しました。002bq8v6082

  講演も最後になり、倉増先生は参加者がより理解しやすいよう、帰宅願望や、幻視、不安、攻撃的・粗暴的言動などがみられた症例を紹介。それを踏まえ、「認知症をもつ患者さんへの対応」として、

(ア) 認知症が急に進行することはまれ(身体疾患の併発・・・)

(イ) 高齢の方は、環境変化に弱い・・・精神症状につながる

(ウ) 周辺症状は人的な対応次第で変化することがある

(エ) せん妄であった場合、除去可能な要因がないか検討

(オ) 患者さんの言動には理由がある・・・背景を想像する余裕を

(カ) 患者さんの安全確保のため、適切な療養環境の調整を

・・・の6項目を提示し、講演を締めくくりました。

  国が地域における認知症疾患の保健水準の向上を図ることを目的として整備を進めている、地域の認知症医療の拠点となる病院「認知症疾患医療センター」は、倉増先生が勤務されている一般財団法人弘潤会 野崎病院(宮崎市)に加え、県内には医療法人向洋会 協和病院(日向市)、そして藤元メディカルシステム 大悟病院(三股町)の3施設。それぞれで認知症に関する鑑別診断・診察・治療、専門医療相談、そして研修会の開催や情報発信を行っています。「県内3カ所というのは少ないのではないか?」という見解を冒頭に述べた倉増先生の講演を聞きながら、参加者は認知症疾患医療センターなどと連携しながら、地域包括ケアの拠点として認知症高齢者をサポートしていく責務の重さを感じながら聞き入っていました。003img_8310

(つづく)

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