未来はやってこない!?
これは、「素粒子のニュートリノが光より速い」というものです。名古屋大学などの国際実験チームがヨーロッパで実験し、測定した結果、「ニュートリノは光の速さ(秒速30万キロメートル)よりも10万分の2速い」と9月23日発表したものです。アインシュタインが唱えた相対性理論。「光の速度を超える物質はない」と言われて100余年、その前提で物理学がずーっと語られてきたわけですが、今になって、「それがありました」となったものですから、さあ大変。事実であれば、現代物理学を支えてきた理論を、その根底から見直さなくてはならなくなりそうです。
そして、そして!この相対性理論によると、物体の速度が光速に近づくほど、物体にとっての時間は遅くなり、光速で動く物体は時間が止まってしまう、と言われてきたのです。それはあくまでも「光より速いものはない!!」という前提でのことです。それがこの期に及んで「光より速いものがありました」となれば、その物体は、時間をさかのぼっている、ということになってしまうのです。つまりタイムマシーンです。夢のような話ですが、この研究結果、これから世界中の学者らによって検証されていくことでしょうが、果たしてその真偽のほど、いかに出ますことやら。
この報道を知って、筒井康隆さんの「宇宙衛生博覽會」(新潮文庫)に収められている、「急流」という短篇小説を読み直してみました。昭和54年、今から30年も前の作品です。これは、「時間の流れが早くなる」という現象が世界中で起こる、という内容です。最初は会社に5分、10分遅れる程度だったのが、加速度的に早さが増し、朝家を出たら夜会社に着いたなどはまだ序の口。厚着して冬家を出たら夏に着いて汗びっしょり。しまいには二十世紀の最後の数年があれよあれよとわずか数秒で過ぎてしまい、迎えた二十一世紀。2001年から先に時間はなかった、という、まさに筒井ワールド全開のはちゃめちゃストーリーです。
そういうわけではありますが、とりあえず現在の私たちの日常生活において、時間というものは万人に等しく与えられているものと言えます。それなのに、「一日があっという間に過ぎた」という日と、「一日がとても長く感じた」という日があったりします。大事なのは、一日一日を、極言すれば一瞬一瞬を、いかに有意義に過ごすか、ということではないでしょうか。遠い将来はさておき、現在の科学力では、過去に戻ってやり直すということはできません。その日、その時を大切にしなければならない、と思った、びっくりニュースでした。