猫走り
結果は2時間37分39秒で5位。これでは代表決定には不十分ということだそうで、17日の宮崎日日新聞には「猫さん五輪出場ピンチ」と小さく乗っていました。だけどこのタイム、一芸人として、はたまた一市民ランナーとしてのフルマラソンのものとしては、すごいのです。100メートルを22.4秒ちょっと。それを延々42.195キロ維持するというのは並大抵のものではありません。
「サブスリー」という言葉があります。フルマラソンを3時間以内で走りきることを言う、市民ランナーの憧れであり、目標でもあるのですが、全市民ランナーの中で、これを達成できるのは、わずか1%というデータもあるほどで、一般人(もちろん芸人も)が3時間を切ることがいかに大変かがわかります。それに対して今回の「猫走り」。一般ランナーのタイムとして見れば驚愕と賞賛に値します。お笑い芸人という、昼夜を問わない不規則な仕事の合間を縫って、相当にハードな練習を積み重ねてきたのだと、頭が下がります。今後の選考レースで、さらに良い結果を出して、オリンピック出場を果たして欲しいと思います。
ところで、猫ひろしさんに代表されるように、最近のお笑い芸人には、単に笑いをとるだけではなく、それとは別に人から「すごい!」とリスペクトされる特技や才能を持っている人が多いという傾向があるようです。また、それを題材にして、一流アスリートや格闘家などと、お笑い芸人が対戦するテレビ番組も好評です。本業の「笑い」の部分だけでなく、「達人」としての真剣で感動的な一面を見せることで、「この人、普段はばかなことばっかりやってるけど、実はこんなすごいところもあるんだ。見直したなあ」と、その芸人に対する評価は大きく違ってくるように思います。
そのように考えたとき、私たち老健に勤める者も、このようなお笑い芸人に見習うべき所が少なからずあるのではないか?と感じました。すなわち、利用者と接する上で、それぞれの専門性を発揮するのは当然として、それにプラスアルファとなるような何かがあるといいのではないか、と。それがあると、「あんたはすごいねえ」と、利用者様とコミュニケーションを深める上で好材料となるだけでなく、色々な趣味や特技、才能を持ったスタッフが集まることで、施設全体として、その魅力は何倍にも増していくのではないでしょうか。「芸は身を助ける」と言いますが、スタッフそれぞれの「芸」は施設をパワーアップし、利用者様の「その人らしい」生活づくりを支援することにつながるのではないかとも思います。
猫ひろしさんの本業であるお笑い芸が、どのくらい面白いのかはさておいて、マラソンに頑張って打ち込んでいる姿を見ると、応援したい気持ちになります。私たちも、与えられた仕事をただこなすだけでなく、それに付加できるような何かを身につけておくといいのかもしれない、とふと思ったニュースでした。
マラソンと言えば、昨日(20日)行われた横山国際女子マラソン。優勝は木?良子選手。尾崎好美選手との抜きつ抜かれつのデッドヒートを制しての勝利、感動的でした。こちらはオリンピック出場、ほぼ確実でしょう。来月は男子の選考レースの一つ、福岡国際マラソンがあります。今日のような手に汗握る激走を見せて欲しいですね。
(※)いぬ‐ばしり【犬走り】
小股にちょこちょこ走ること。浄瑠璃、新版歌祭文「一時三里―日暮までには戻つてくる」築地ついじの外壁と溝との間の狭長な空地。後世、城郭の牆かきにその形が残った。犬行いぬゆき。(広辞苑より)