研修会開きました(栄養給食部会:その3)
次に「高齢者ソフト食フードスケールの作成 ~利用者の状態像に考慮した適正な食形態選定のために~」と題し、栄養給食研究部会の委員長を務める、ひむか苑の管理栄養士、船ケ山
塁さんが研究発表を行いました。同苑は14年前から高齢者ソフト食をいち早く導入して以来、利用者の要介護度重度化に伴い、メニューを再検討し、ソフト食を進化させてきました。しかし、ソフト食の献立づくりに時間がかかることや、各施設での食形態および名称にばらつきがあること、さらに入所時、食形態決定が難しいことなどから、利用者一人一人に適した食事が提供できるのか?という問題が生じてきたことを受け、「高齢者ソフト食フードスケール」の作成に踏み切ったとのことです。
この「高齢者フードスケール」は、「食べる力の目安(かむ力、飲み込む力)」、「食べる方の状態(食べづらい職員、歯の状態)」などのそれぞれについて段階付けし、それによって「普通食」、「ソフト食1(弱い力でかめる)」、「ソフト食2(歯ぐきでつぶせる)」、「ソフト食3(舌でつぶせる)」、「嚥下食」が選べ、利用者に適した食事が提供できるというもの。発表ではこのフードスケールを活用することで、意思疎通が困難だった利用者に、食事中笑顔が戻り、意思疎通も可能になった事例や、寝たきりで食事は介助を要していた利用者が、栄養状態が改善し、食事も自力で全量摂取できるようになり、さらに杖で歩くことも可能となった事例が紹介されました。
このように「高齢者フードスケール」を活用することで、船ケ山さんは「個々に適した食形態の決定が可能となり、喫食率が安定することで体力がつき、ADL向上に向け、積極的なリハビリが可能となり、QOLの向上につながる」と強調しました。
最後に「高齢者栄養教室の取り組み」と題し、はまゆうの松元千鶴さんが活動報告を行いました。この栄養教室は去る10月27日、都城市コミュニティセンターで同研究部会都城支部、そして小林支部の栄養士が協力して開催し、老健やグループホーム、訪問介護など、日頃高齢者の食事に携わる人達26名が受講し、高齢者ソフト食について講話や実習、試食を通じて学んだものです。
報告は、楽しく、おいしく、そして真剣に行われた栄養教室の模様について、写真を交えながら行われました。また、同日行ったアンケートで、高齢者ソフト食が見た目の美観を損なわず、それでいて食べやすいと好評で、その具体的な調理法が理解できて有意義だったことなどが紹介されました。
一方、一般的にはまだ「ソフト食=刻み食」と思っている人も多く、またソフト食に対して壁を感じている参加者も少なからずいたことを踏まえ、松元さんは「私たち栄養士が積極的に高齢者ソフト食を各施設で導入し、利用者様やご家族、施設のスタッフに浸透させていきましょう」と呼びかけました。
限られた時間の中で、内容の濃い、充実した研修会となりました。