「波のうえの魔術師」って・・・

2013年6月14日|

 「波のうえの魔術師」は石田衣良の作品です。文春文庫から2003910日に第1刷が出ています。

 タイトルから想像すると、てっきりサーフィンがむちゃくちゃ上手で、自由自在に波を乗りこなす、まさに魔術師みたいな若者が主人公の物語ではないか?しかもサーフィンと言えば宮崎。県内のどこかのサーフスポットを舞台にした青春ストーリーか?と期待してしまいそうですが、全然違います。

 「波のうえの魔術師」と呼ばれるのは小塚泰造という老人。彼は株式投資のプロ。つまり「波」とは「株価の波」のことなのです。波の底で買って波の頭で売れば利益になる、という具合に、上下する波を読んでそれを巧みに乗りこなす。だから「波のうえの魔術師」というわけです。

 並の大学を5年かけて卒業した就職浪人中の主人公、白戸則道が小塚老人の手ほどきをうけて株式投資への道に没頭、マーケットに恋をするという内容です。あれまあびっくり。

 「えーっ(+_+。)これってほんとに石田衣良の作品なの?『池袋ウエストゲートパーク』や、『うつくしい子ども』の作者で、直木賞作家の石田衣良が著したものなの?」と思ってしまいましたが、それを見透かしたかのように解説の西上心太が「いや、あなたは間違っていない。確かに本書は石田衣良の作品である」と断じていますから、まったくもって「してやられた!!」という作品です。

 この小説はバブル経済がはじけた頃の話で、株の事に詳しくない人でも楽しめる一冊です。株価の動向が注目されている今日この頃、読んでみてはいかがでしょうか。

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