終わらない夏
行く夏を惜しむかのように、若者達が寝る間も忘れて青春を語り合う姿を見かけます。若さっていいものですね。
そんな光景を見ていると、「少年たちの終わらない夜」という小説を思い出しました。著者は鷺沢
萠(さぎさわ めぐむ)さん。河出書房新社から初版が1989年9月29日、そして1992年2月20日には23版が出ていますから、読まれた方も多いかもしれません。ドラマ化もされたんじゃなかったでしょうか。
この本は、表題作の他、「誰かアイダを探して」「ユーロビートじゃ踊れない」「ティーンエイジ・サマー」の4作品からなります。高校生から高卒、大学生(19歳)までのエネルギッシュだけれど、やり場が無い、煮え切らない、多感で微妙な年頃を描いています。タイトルからして、若さムンムンです。
ただし、内容そのものは、そんなに重たいものではありません。軽く読み進めていくことができます。ところがそうは問屋が卸さない。読んでいくにつれて自らの若かりし頃の思い出が蘇って来るのです。別に小説の内容が自らの体験と重なるわけではないのですが、作品のストーリーと自らの思い出が、頭の中で同時に進行し、展開していくような、そんな不思議な感覚になってしまうのがこの本の魅力じゃないかと思います。
読み終わったらちょっとセンチメンタルな気持ちになってしまいます。何だか著者の思うつぼにはまったかな?と思いますが、別に悔しくもありませんし、むしろ「あの頃を思い出させてくれてありがとう」という感謝の気持ちが湧いてきました。夏の終わりのこの時期にしんみりできる一冊です。
なお、作品中で未成年者が飲酒したり、喫煙したりするシーンが出てきますが、当然ながら当協会は未成年者のそれらの行為を薦めるものではありません。作品は薦めますが、未成年者の飲酒、喫煙は法律で固く禁じられていますので申し添えます。