第14回研究大会開きました(その10)

2018年1月17日|

 市民公開講座は続いて、前田良一副施設長が勤務されている宮崎リハビリテーションセンターの取り組み状況が紹介されました。機能訓練や生活介護、施設入所支援、相談支援事業などなどの実際がスライドを用いて紹介されると、受講者は老健施設における業務との相違を検証しながら学んでいました。

 そして最後に今回の講演テーマでもある「共生型社会の実現に向けての取り組み」として、前田副施設長はスライドに、

(a)介護支援専門員と相談支援専門員の連携

(b)障害特性の理解と対応

(c)社会の一員として退所できるよう支援を行う(社会背景を理解して)

・・・の3つを示しました。その上で「『社会の一員として退所できるよう支援を行う』、これを一番伝えたいと思います。施設を退所するというとき、どういう支援をしていくか、どういう退所をさせていくか、家に帰ってどう生活し、何をするか、それを考えないといけません。退所して社会の一員として、社会参加につないでいかないと長続きしません。共生型社会のためにはその人に役割がないと寂しくはないでしょうか。老健の皆さんも利用者ひとりひとりについて『この人はかつて婦人会長をしていた』、『長年編み物をしていた』など、どんな生活を送り、どんな仕事や役割をしていたかを考え、本人が何をしたいか、社会参加のためにアプローチをどうやるか、と考えると思いますが、障害者の人も同じです。この世に生まれてきて、何かしらのトラブルで頓挫したけれど、次のステップを踏み出すためには役割を残す。その残し方が共生型社会です」と、共生型社会の実現のために、高齢者も障害者も役割をもって社会に参加し、社会の一員として生活することが大事であり、それを支援することが重要であることを強調すると、受講者は深い共感をもってうなずいていました。

 最後に障害者権利条約が平成18年の第61回国連総会で採択され、平成26年に日本もこの条約を締結したことを受け、今後障害者の権利実現に向けた取り組みが一層強化されることに触れ、業務を遂行する中でその動向を注視し、変化していく社会に沿った支援をすることが求められていること、そのために激動する社会の中で常に情報収集しないと遅れを取ること、そしてその遅れは利用者にとって致命的なものとなることから、「各自が責任を持って研鑽に励んで下さい」と呼びかけて講演を締めくくると、会場は感謝の拍手で包まれました。

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 市民公開講座に続き、閉会式に移りました。閉会にあたり櫛橋弘喜協会会長は「ただ今『共生型社会の実現に向けて』と講演していただきましたが、『共に住む社会』そして『支え合う社会』を成功させるために地域包括ケアシステムがあります。この地域包括ケアシステムを軌道に乗せるために老健の役割は重要です。つまり入所させることがメインでなく、在宅を支えることがメインでなければなりません。色々な施設が様々な取り組みをしていますが、トータルで在宅を支えられるのは老健しかありません。根本的にものの本質にかえって『在宅を支える』ということをやり遂げて共生社会を作っていきましょう」と挨拶し、大会の全日程が終了しました。

 診療報酬と介護報酬の同時改定を目前に控えた中、大会のテーマである「人に地域に関わり合う老健」のもと、参加した266人が地域包括ケアの一翼を担う老健の進むべき道について考え、共生社会実現のための思いを新たにすることができた、大変有意義な大会となりました。

(おわり)

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