濡れ手で泡

2013年6月20日|

  間違いやすい日本語は数多くありますが、その一つに「濡れ手で粟(あわ)」というのがあります。『暮らしの中のことわざ辞典』(折井英治
編、集英社)には「骨折らずにうまいことをすることのたとえ。また、たやすく物を手に入れること。濡れた手で粟をつかめば、骨折らずとも粟がたくさんくっついてくるので都合がよい」とあります。

 これをどう間違うか?というと、そう、「濡れ手で泡」。濡れた手で泡をつかもうとすると、乾いた手よりも泡が割れにくくてどんどんつかめるぞー!わーい、わーい(^o^)・・・って、そういうふうに誤解されている人はそんなに少数派ではないのではないでしょうか。

 そもそも、「”粟(あわ)”とは何ぞや?”栗(くり)”のきょうだいか?」というくらい、粟を見かけることが少なくなってきたのも、この誤解の背景にあるのかもしれません。粟はイネ科の植物で、「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」の五穀の一つにしっかりエントリーされているのです。黄色っぽくてちっちゃな粒です。ペットショップに行ったら小鳥の餌として売っているので「ああ、あれか!」とわかるはずです。その粟の中に濡れた手をつっこんだら、ことわざの通り手が粟だらけになること請け合いです。ただし、ショップでは絶対にやらないで下さい。

 というわけで「濡れ手で粟」が正解で、「濡れ手で泡」は間違い・・・と一般的には言うのですが、私たち老健施設に勤める者にとって、「濡れ手で泡」は間違いどころか絶対に欠かすことのできない重要なことなのです。それは一体なんでしょう?ヒントは「流水と液体石けん」を使います。

 そうです。もう皆さんおわかりでしょう。手洗い、すなわち「手指衛生」です。感染制御を徹底する上で、手指の消毒は基本中の基本ですね。流水と液体石けん(つまり”濡れ手で泡”です)を用いる方法と、擦式アルコール製剤を使う方法とあり、それぞれ特徴がありますので、上手に使い分けましょう。

食中毒のリスクが特に高くなるこの季節、“濡れ手で泡の手指衛生!”と肝に銘じながら手洗いを実践し、習慣化し、感染防御に努めましょう!

« 前のページに戻る

TOPへ