暑い時におすすめの一冊『炎都』

2013年8月16日|

 暑い日が続いております。そんな今日この頃にいかがか?という本の紹介です。

 「炎都 City
Inferno
」は柴田よしきさんの作品で、徳間文庫より20001115日に初刷が出ています。

 舞台は京都市。地質調査会社に勤める木梨香流は、地下水の水位が急激に下がっていくのを不思議に思います。それから間もなくカラカラに干からびた連続ミイラ化殺人事件が起こり、人々を恐怖に陥れますが、しかしこれは平安時代、藤原道長に焼き殺された花紅姫の怨念と、姫が思いを寄せた一条帝への執念による都壊滅への序章に過ぎなかったのです。

 その後地下直下型地震で市街に通じる交通網の全てを遮断された京の都の空を、飛黒烏(ひこくう)が飛び交います。ギャオスに似ているこの妖怪は元々天狗族。火妖族に改造されて人間を瞬時にミイラにしてします。さらに空から落ちてくる火の玉が町を火の海にしますが、これは鞍馬(天狗)のしわざ。川からは水虎という、カッパの中でも最もどう猛な妖怪が上がってきて人を襲います。そして様々な妖怪が入り乱れて都はまさに「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」。どうしてこんなことが起こったのか?花妖族最後の生き残り、花紅姫を封じ込めていた五芒星の封印が破られたからなのでした。

 この危機を救えるのは誰か?それは花屋を営む真行寺君之。彼こそ一条帝の生まれ変わりなのですが、そんなことはつゆ知らず、いやいやお見合いをするはめになった香流にコサージュを作ってやったのが縁で相思相愛となります。そんな君之の前に現れたのはゲッコー族の遣い珠星(じゅせい)。なんとイモリの姿をしていますが、南海の巨神「ゲッコー」の遣いで、様々な超能力を持ち、君之のシャツのポケットに入り、君之を守り、助言を与えます。

 多くの人が犠牲になり、タイトル通り「炎都」となった京都。このまま滅んでしまうのか?という絶体絶命の中、それぞれの登場人物が自分に与えられた使命を遂げようと必死の頑張りを見せます。果たしてその結末やいかに・・・・・。

 封鎖され、炎上する京都の街で展開される想像を絶する展開がハラハラドキドキですが、その一方で、登場人物の会話がとても軽妙で笑ってしまう場面もしばしばです。「魑魅魍魎(ちみもうりょう:山の怪物や川の怪物。さまざまのばけもの/『広辞苑より』)」という言葉はこの作品のためにあると言ってもいいくらい、たくさんの妖怪が出てきますが、決してホラー作品ではありません。「痛快妖怪小説」とでも言いましょうか。

 柴田よしきさんの「炎都」シリーズの第一弾でもあるこの作品、結末を申し上げるわけにはいきませんが、暑いというか「熱い」と言ったほうがいいくらいのこの季節に読むと、スカーッとすること請け合いです。その面白さについつい熱中してしまうことと思いますが、熱中症にはくれぐれも気を付けて、お読みになってみてはいかがでしょうか。もちろん、利用者様の熱中症予防もしっかり行って参りましょう。

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