経営セミナー開きました(事務長会:その7)

2013年10月18日|

 これだけで終わっては教科書的でおもしろくないと思いますので、それでは現実的な問題に目を向けてみたいと思います。多くの老健は「期待はわかるけど、どうしたらいいかわからない。どう変化していいか不安」と考えていると思います。つまり、「在宅復帰と言うが、帰れない人ばかりではないか。リハビリ機能を減らして、居住系の比率を増やした方がいいのではないか」、「医療ニーズが高い人が増えており、有床診療所を併設するなど、医療機能を強化した方がいいのではないか」、そして「在宅支援の必要性はわかるが、24時間巡回型は地方では経営が困難なのではないか」、さらに「相談対応と言っても、その経費はどうするのか」などといった不安を抱えているのではないでしょうか。しかし将来的にはこれらがなければ地域包括ケアシステムは動きません。なぜならば、24時間在宅での安全・安心を老健に託す人がいるからです。知恵を出してどうにかしなければなりません。相談対応も今はボランティアかもしれませんが、これは地域の人たちのニーズなのです。例えばコンビニによその人が来て道を尋ねたら一銭にもならなくても教えます。そういうことが必要だと思います。親身になって相談に乗ってあげることで、将来金になる事が出てくるかもしれません。

 皆さんで考えていただきたいと思います。老人保健施設の我が国での役割、すなわち基本軸は「在宅復帰・在宅療養支援・生活期リハビリの拠点」であり、これは開設当初より変わっていませんし、この潮流は変わりません。ただ、そこに軸を置きながら、それぞれの施設の各地域での役割は違うと思います。老健としての機能や地域の施設に対する期待、そして経営上の課題は違うと思います。

 たとえば、JRが全て新幹線になったわけではありません。私の地元には肥薩線が走っています。地方路線は住民の足として必要であり、廃止するわけにはいきません。それでみんなで知恵を出しました。超スローの観光列車というのを走らせ、景色のいいところではスピードをぐーっと落として楽しんでもらったり、居酒屋列車を走らせたり、SLも走らせたりしています。また、祭りにあわせて臨時列車も走らせています。そのようにして生き残るために知恵を出しているわけです。

 老健も特養も、現在の施設が将来同じ形で運営されるのが本当にいいのでしょうか。医療の現場の過去を振り返ると、病院の類型も時代とともに大きく変化してきました。昔の地域基幹病院がすべて高度急性期医療に特化してきたわけではありませんし、都会と地方でもそのあり方は違っています。医療と介護は違うかもしれませんが、それぞれの施設のあり方よりも、ダイナミックにかつ柔軟に検討する時期にきているのではないかと思います。今の制度の中でどうやって生き残っていくかを考えていく必要があります。

 地域包括ケアシステムの目標年度は2025年です。その間に介護報酬改定は4回、うち診療報酬との同時改定は2回行われます。また、これからの施策は国が大きな方向性を定め、地方自治体がその地域に合った政策を実行する、という我が国の大きな方向性は決まっています。そして地域住民の期待を反映できるかどうかは各地方行政の責任です。その地域で、それぞれの施設の果たすべき役割は何かを考えてほしいと思います。

 ”Rome was not
built in a day
“(ローマは一日にして成らず)と言います。決して甘いものではありませんが、決して余裕がないわけではないと思います。ぜひ大きな流れをしっかり見極めて、この厳しい時期をしのいでいっていただきたいと思います。

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(終わり)

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