沈没船みつかる!

2011年11月4日|

 「海狼伝」は白石一郎さんが書かれた海洋冒険時代小説の最高傑作。昭和62年、直木賞受賞作品です。

 時は戦国時代末期織。対馬の漁村で小舟を操り、海女を漁場まで送る「後押し」をしながら暮らしていた、18歳の笛太郎少年。あだなは「大将」。船と海への強い憧れを持つ──。

 そんな笛太郎が海賊の一味となり、やがて海のウルフとなって成長し、遙かなる海へと旅だっていく様を描いたスケールの大きい一冊です。この作品のすごいところは、海や船に関する描写の緻密さ。それも和船、ジャンク(中国船)、そして南蛮船という、それぞれ特徴のある船の構造やその操舵法などを、あたかもその時代に行ってきて、実物を目の当たりにしながらペンを走らせたんじゃないか!?と思うほどのリアルさで書き表しています。

 また、海賊といいながら、正義感に溢れる笛太郎。海中に溺れ行く敵を、何の迷いも無く自船に救い上げてやるなど、少しも悪者っぽくありません。むしろ正義の味方。天正の笛太郎を、平成で言うなら「ワンピース」のルフィー、はたまた「パイレーツオブカリビアン」のキャプテンジャックスパロー。昭和で言うならキャプテンハーロックのような存在と言えるでしょう。ぜひご一読あれ。

 そんな笛太郎も、きっと仰天して、愛船「黄金丸」の船べりから落っこちそうになるようなニュースが、1025日の宮崎日日新聞に載っていました。鎌倉時代に来襲した元寇の沈没船といられる船体が、長崎県松浦市の鷹島沖で見つかったのだそうです。しかも、船の構造が分かる状態での発見は国内で初めてとのことで、元寇の実態解明につながる、重要な手がかりになりそうだ、とも。そしてそして、これが本当に元寇のものであるならば、笛太郎が希望という名の帆に順風を一杯に受け、船を走らせていた時代から、さらに300年も前の船ということになります。しかも、場所も同じ。つまり、黄金丸が波かき分けて進む海原の底、はるか深く暗い所で、この元寇沈没船はひっそりと深い眠りについていたということになります。

 現代からさかのぼると、実に700年以上昔の船です。これはもうロマンです。著者の白石一郎さんは、「海狼伝」を書くにあたり、資料集めや現地調査に膨大な時間を割いたのだそうです。しかし、笛太郎の活躍と成長を、海底から見上げていた元寇船がいたことは、果たしてご存知だったでしょうか。残念ながら2004920日、黄泉路への航海に旅立たれた白石さん。ひょっとして今頃、「まさか、それは本当か!?」あるいは「やっぱりあったか!」などと言いながら、舵取りを誰かに任せ、再び原稿用紙に向かわれているんじゃないのかなあ、などと想像してしまったビックリニュースでした。

« 前のページに戻る

TOPへ