老後をロボットに託すのか? 否!

2011年11月9日|

  112日の朝日新聞に、「トヨタ発 介護・医療ロボ」という記事があったのを読まれた方も多いかと思います。体の不自由な人や高齢者の自立歩行をたすけたり、ベッドから人を持ち上げて、トイレに移動させたりするロボットを、2013年以降に実用化するのだそうです。同日付の各紙に同じ記事が載っていましたので、それだけ皆の関心も高いことがうかがえます。

 価格は未定とのことですが、これが実用化されれば、私たち老健に務める者の仕事は減るのでしょうか?あるいは、私たちの仕事そのものが、ロボットに取って代わられるのでしょうか?食事介助ロボット、入浴介助ロボット、排泄介助ロボット・・・。日本人の老後はロボットが見ることになるのでしょうか?そうではないと思います。

 「やさしい言葉は、たとえ簡単な言葉でも、ずっとずっと心にこだまする」とは、マザー・テレサの言葉です(『いい言葉は、いい人生をつくる』、斎藤茂太、成美文庫より)。そしてその言葉とは、機械が発するものではなく、生身の人間が、心を込めて語りかけることで、相手の心の中で共鳴し、残響し続けるものなのではないでしょうか。

 未来。ある一人暮らしの男の部屋。彼に限らず、人々の身の回りの世話は全てロボットがやってくれる時代。いつもの朝と同じように、身体を起こし、顔を洗い、髭を剃り、着替えをし、朝食を食べさせ、歯を磨く。全ての動作をロボットが「機械的」に話しかけながら淡々とこなしていく。彼が死んでいるとも気付かずに・・・。そのような内容のショート・ショートを、星新一さんが書かれていました(タイトルは忘れてしました。ずーっと前の作品です)。

 そんな未来を、そんな老後を望む人は果たしてどのくらいいるでしょうか。重要なのは、ロボットをいかに有効に使うか、ということです。ロボットを活用することで、人間の負担や疲労、そして危険を軽減する一方で、人間は心を込めた介護に専念する。それにより、人間は人間らしく、心豊かな生活を送ることができるのではないでしょうか。そういう時代が到来したとき、今以上に介護の本質が問われるようになるのではないか、と思ったニュースでした。

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