撓う(しなう)

2012年1月16日|

  「撓う」と書いて「しなう」と読みます。『広辞苑』には「(弾力があって)しなやかにたわむ。しなる」とあります。「しなやか」・・・いかにも柔軟性があって、びよーん、びよーんとしたイメージがあります。

 この「撓」の字を冠した身体の部位があります。「橈骨」。「とうこつ」と読みます。前腕(肘から手の間)にある2本の骨のうち、親指側にある方の骨です。この橈骨のおかげで、人間は手のひらをヒラヒラと表裏に回すことができるのです(回外・回内と言います)。「キラキラ光るー、お空の星よー」と歌って踊る時の、あるいは、柳沢慎吾さんの代表的持ちネタで、事件現場に刑事がパトカーで来る時「ウーーーーッ」両手を回して赤色灯が回転している真似をする、あの動きです。さすれば、この「橈骨」、その名の通り、「弾力があって、しなやかで、たわんで、しなる」のか?いーえ、いーえ!そんなことは決してありません。高齢者が骨折しやすい骨の一つがこの橈骨。「橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)」といって、転んで手をついた時などに、この橈骨の手に近い部位を折ってしまいやすいのです。「びよーん、びよーん」なんてことはありません。

 「それじゃあ、転んで手をつかないようにすればいいじゃん」と寒さにまかせてポケットに手を突っ込んで歩けばいいのか・・・ブー!!!ダメです!もってのほかです。よけい危ないです。

 転ばないことが第一です。転倒予防の一環として、柔軟な身体、すなわち「撓う身体」作りに取り組むのはいいことだと思います。ストーブの前で丸くなっている猫を見ながら、「ああ、こいつは普段はこんなにしてるけど、いざ落下という時にはショワーンと身体を撓わせて、何事もないように着地するんだよなあ」と思いつつ、「橈」の文字を思い浮かべた次第でした。

« 前のページに戻る

TOPへ