「カーネーション」は終わらない

2012年4月13日|

 NHK朝の連続テレビ小説「カーネーション」が大好評のうちに3月で完結しました。「カーネーション」効果で、ミシンの需要が高まったとの話も耳にします。毎週新聞に載る視聴率が常にトップクラスにあったのもうなずける、素晴らしい番組でした。44日の朝日新聞にはその脚本を書いた渡辺あやさんのインタビュー記事が掲載されていました。その中で「はっ!」と思わされる事を、渡辺さんは言っていたのです。

 記事は、「登場人物がたくさん死ぬ。悲惨な運命も容赦なく描かれる。それでも見ると励まされ、生きる力が湧いてくる。そんなドラマ」だった「カーネーション」を書いた渡辺さんと記者が、「人が不幸や不条理を乗り越える力はどこからくるのか?」を考える内容でした。

 その問いに対し、渡辺さんは「不幸や不条理に立ち向かうには、すごく地味なことをコツコツやっていくしかない」と答えていたのです。「あるところに大きな救いがあって、そこに自分も回収される、というのは絶対うさんくさいし、本物じゃない」と。

 「すごく地味なこと」として、渡辺さんは、「人の役に立つこと」を上げていました。「大人だって本当は、誰かの役に立ちたいと強く願っている」と前置きした渡辺さんが、それをやってどうなるのか?ということについて「人の力になりたい、という気持ちが満たされた時、人は自分自身の価値を見いだせる」と結んでいたのです。これを読んだときです。「はっ!」としたのは。

 私たち老健施設に勤める者の仕事こそ、「人の役に立つこと」であり、「人の力になること」ではないでしょうか。もちろん、主役は利用者様であり、その生活の質、人生の質の向上を主体的に考えて仕事に従事するのは当然です。しかし、その事を通じて私たち自身が、自分自身の価値を見出すことができるという、非常に恵まれた環境の中で、私たちは日々業務に当たっていると言えるのではないでしょうか。

 そう考えて、胸の鼓動が高まるのを自覚しながら記事を読む私を見透かしたかのように、最後の段落で渡辺さんは、お年寄りと自分たちとの関わりについて「お年寄りにしか与えられないものがいっぱいある。私たちもお年寄りに与え、一緒に生きることで、自分の中で育てられるものがある」と言及していました。

 これはもう、やるしかありません!老健施設で働けることに感謝しながら、利用者に与え、一緒に生きましょう。そしてそのことによって、自分自身の価値を見出し、育てていこうではありませんか!!「カーネーション」の番組は終了しましたが、私たち一人一人の胸の内に、渡辺さんの言葉を刻み、日々の業務に邁進しようではありませんか。いつの日かそれぞれの心の中がいっぱいの「カーネーション」で満たされるように。

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