かき入れたものとは?

2013年1月15日|

 もう去年の話になってしまいましたが、年末、スーパーに買い物に行った時のことです。警備員を配した駐車場はほぼ満車。何とか車を停めて店内に入れば黒山の人だかり。レジには行列。さすが年末モードです。

 「うーん、これはまさしくかき入れ時だねえ」ふっと洩らしたその瞬間、頭上に「?」マークが浮かびました。

 

「一体何を”かき入れる”と言うのだろう(´・_`)

 

 その時点までは「掻き入れる」つまり、「(指・爪・熊手などで)かくようにして中に入れる」(『スーパー大辞林』より)という意味合いで「掻き入れ時」とずーっと信じ込んでいたわけです。

 「まさかまさか、テレビでよく見るお正月風景のあれ!大きな社寺の初詣での時に賽銭箱のかわりに広いシートを敷いて、そこに遠くからポーンと投げるお賽銭の山!あれを熊手で掻き入れる、ってところから”掻き入れ時”と言うようになった・・・そんなわけはないよなあ、絶対に」

 などと非常に不謹慎な事(もちろんそんなことはしませんよね)を考えていてはらちが開かない、というわけで、同じく『スーパー大辞林』で調べてみました。すると意外や意外(゜Д゜)。そこには次のように掻いて、じゃなくて書いてあったのです。

 

【書(き)入れ時】:〔帳簿の記入に忙しい時の意から〕商売が繁盛してもうけの非常に多い時。『盆と暮れは商店街のだ』」

 

そうです。「掻き入れ時」じゃなくて「書き入れ時」。帳簿の記入が忙しいからだったとは!己の無知に恥じ入るばかりです<(_ _)>

今や帳簿は電算化の時代。「書き入れ時」というよりもパソコンで「打ち込み時」、あるいはバーコードで「読み取り時」とでも言うのかなあ。まあそれはよい。とにかく長年の誤解が正せたことでよしとしよう、そう思った次第でありました。

余談ですが、佐藤正午の著書『ジャンプ』(光文社文庫)には、この「書き入れ時」という言葉が2度使われています。この作品を読んだのは、時あたかもこの誤解が解けた直後。うーん、もっと早く読んでおけばよかった(+o+)・・・いやいや、そういう問題ではありません。これは名作です。たった一杯のカクテルが人の人生を変えてしまうのです。それを飲んで酔っぱらった男性のために「五分で戻ってくるわ」と、翌日の朝食のリンゴを買いに出かけた彼女が忽然と姿を消してしまうというミステリー(?)です。その真相は意外や意外!!すっごく面白い上に、「書き入れ時」の正しい使い方までわかる傑作です。一気に読み進めなくては気が済まなくなるような、超望遠レンズも顔負けの引き寄せ効果抜群の小説、是非ご一読あれ。

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