褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その10)

2014年6月27日|

【34.褥瘡治療の実際(5)

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 このようにラップ療法を用いた治療成果を紹介してきた津守先生。しかし、「今までいい所だけしか話してきていませんが、気をつけないことはいっぱいあります」と切り出し、「ラップ療法の主なトラブル」というスライドを示して話始めました。

 「ラップ療法に限らず、被覆材により密封して浸出液が中にたまって起こしやすいのがやはり細菌感染です。じめじめと湿った環境では細菌や真菌などの微生物が増えやすくなります」と感染のコントロールは重要性を強調。「誤ったラップ療法」として、中等度熱傷に患者にラップを貼付し、数日間洗浄せずに放置した結果、発熱、ショック症状、全身の潮紅を来した事例を紹介しつつ、「ラップ療法自体が悪いのではなく、ラップ療法への理解なしに治療を行うと、こういうことになる恐れがあります」と念を押しました。たまった浸出液によりじめじめした環境の中でブドウ球菌が増え、菌体外毒素により全身が真っ赤になった写真を、参加者は真剣な表情で見入っていました。「褥瘡や熱傷の、特に病初期には、密封させる被覆材やラップを貼りっぱなしにしないこと!」と大きく書いたスライドを示しながら、「最初の時期(炎症期)は感染も起こり、ばい菌もつきやすくて浸出液も多く、そういう時期はラップ療法はやりにくく、それが理解できない方の場合、貼りっぱなしにしたり、『きずをぬらすとばい菌がつく』と処置しないでいたりすることもあるので、ラップ療法はしない方がいいのではないかと思います。またラップ療法をする場合でも、とにかくキズの処置はこまめに観察をしながらやらないといけません」強調しました。

 また、ラップ療法をしている時は貼付部に白癬やカンジダがつきやすいとのこと。これもやはり浸出液のコントロールがうまくできていないことによるもので、その場合はフィルム使用をやめておむつのみにし、乾燥させると軽快してくるとのことでした。「浸出液のコントロールという点でフィルムを使うか使わないかというのを分けてもらうといいと思います」と判断基準を示しました。

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 研修会も終わりに近づき、津守先生は「褥瘡ケアのポイント」として次の4項目をスライドに示しました。

 

(1)何はともあれ徐圧

(2)局所を洗う、入浴は清潔を保ち循環をよくする

(3)消毒は必要ない

(4)栄養は、抵抗力・治癒力の源

 

 最後に「治せる褥瘡と治せない褥瘡がある」として、「現実問題として、私たちのいる病院では初期の褥瘡をみて、ある程度良くなったら皆さん達の勤める老健施設などにお願いしていくので、その方がその後どうなるかというのは正直あまり知りません。褥瘡が治って元気になった方もいれば、全身状態が悪化して褥瘡が治る前にお亡くなりになる方もおられるなど、色々な患者さんがいます。長く寝たきりの状態で動かない方はずっと治らないままで経過している方もおられると思います。そのような方は褥瘡を『治す』というのは難しいのではないかと思います。そういう場合はやはりマンパワーの問題や栄養面など、やれる範囲の中でどうするか、ということを考えていくと『キズが悪くならなければいい』、『生きて行く上でキズがその方に悪さをしなければいいのではないか』という考えもあるのではないかと思います」と、「褥瘡が治らないからだめだ」というのではなく、「褥瘡の状態が悪化せず、利用者の負担にならなければ”よし”」とする考え、つまり「キズと共存していく」という考え方を呈示して講義を締めくくった津守先生に、会場からはわれんばかりの拍手が送られました。

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(つづく)

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