ターミナルケア学びました(看護介護部会:その13)

2014年3月20日|

【亡くなられる二日前・・・実例から学ぶ】

スピリチュアルケアは難しいことではない。利用者の日常を大切にし、笑顔と親切をもって接することが大事であることを学んだ受講者に、林先生は一枚の写真をスライドに映し出しました。それは一人の高齢の女性がベッド上で三味線を抱えているもの。ただし、一人で抱えているのではなく、よく見るとスタッフらしき人の手が”天神”(三味線の頭の部分)を支えていました。

「これは亡くなられる二日前の写真です」という説明に一同驚愕。なぜなら彼女は実に穏やかな笑顔を満面にたたえていたからです。かつて芸子さんだった彼女の「三味線が弾きたい」という希望を叶えようと、三味線を習っているスタッフが家まで取りに帰ったそうです。そして自分で持つ力すら残されていない彼女に、スタッフが力を貸して三味線を構えてもらったところを撮影した一枚とのこと。「自分で三味線を支えることができなくても、希望が叶えて差し上げたときに見せてくれたのがこの笑顔です」という説明を聞きながら、受講者は食い入るようにこの写真を見入っていました。

 次の写真は、がんの多発性の骨転移があって痛みが激しく、骨折もあり身体も自由に動かせない状態の女性。人生を悲観し、「早くいきたい!」と何度も繰り返されていたそうです。そこで林先生はボランティアで病院に来ていたメークの人に、彼女にメークをしてもらうように依頼。最初は気乗りしなかったものの、実際にメークをしてもらうことで笑顔を取り戻し、これをきっかけにボランティアが来るのを楽しみに待つようになり、自分の身だしなみも気にするようになるなど、生きる価値、生きる希望を見いだしていったそうです。写真は美しくメークしてほほえむ彼女を中心に、林先生、ボランティアスタッフ、医療スタッフなどが取り囲んでいる、暖かい雰囲気あふれる一枚でした。

 これらの写真はいずれもご本人の承諾を得て撮影し、公開したものだと断った上で、林先生はこの日の研修会で用い、説明をされました。それまでの林先生の講義の内容、そしてこれまでターミナルケアへ取り組まれてきたご尽力のほどが端的に伝わる貴重な写真でした。

IMG_6452.JPG

(つづく)

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