研究大会開きました(その15)

2014年5月16日|

【本間達也先生特別講演(12)

 次に在宅復帰の話をさせていただきたいと思います。わたしのところの施設は9年前まで在宅復帰率が2パーセントでした。当時は「在宅復帰なんて絶対できない、受け皿がなくなってしまう」と思っていました。しかし9年経ち、去年の制度改正があってから現在、在宅復帰率は60パーセント以上です。ベッド回転率は97パーセントをキープしています。

実は在宅強化型施設になってから入所率が85.8パーセントに落ちて、これはもう法人全体としてやめようか、と思いました。要介護5の人ばかり入れて満床にしようか、などとも考えましたが、ちょうどその頃、楽天ゴールデンイーグルスが優勝する寸前で、職員もモチベーションが上がっていました。「どこが悪いのか」と話し合って取り組んでいきました。今日はそのエキスだけですが話そうと思います。

 「在宅復帰」という言葉は、老健と利用者および家族では意味が違うのではないかと思います。老健側は「リハビリをして家に帰りましょう」とよく言います。これは当然だと思いますが、本当は家族は在宅復帰できない、させたくない、元気になって家に帰ってきても不安なだけで、施設に長くいてほしいという人が圧倒的なのではないかと思います。利用者もやはり「家に帰りたい」と言う人もいますが、「安定してここ(老健)で過ごしたい」という人もいるのではないでしょうか。この矛盾と現実をどう変えていくか、単に在宅復帰させて、それで数字を上げればよいという問題ではないと思います。いかに在宅に老健の機能、つまり専門家の手と目を届けることができるか、という課題取り組んでいる老健は、在宅復帰率高いと言えます。つまり、安心して在宅復帰ができる支援が老健の使命です。

 平成244月に介護報酬が改定された時入所率が97パーセント、6月に在宅強化型施設を達成したとき94パーセントでした。しかし同年10月に88.3パーセント、昨年7月にはさきほど述べた通り、過去最低の85.8パーセントに落ちました。「何が在宅復帰だ、何が在宅強化型施設だ」と思いました。それだけ回転が早いので、職員はみんな忙しいし、私も入所している利用者とその家族を間違えて診察しそうになったこともあるくらいの目まぐるしさでした。

 うちの事務局長は銀行から来ているのですが、その時「先生達の業界は甘くてだめですよ。我々は例えば一ヶ月に預金獲得を100件という目標を立てて回ると、三日ごとに軌道修正するんですよ。それを一週間ごとにやっていてもだめですよ」と言われ、銀行で使っている預金獲得率のグラフと同じようなものを作り、みんなでそれに従って入所率の最低目標ラインを97パーセントに置きながら在宅復帰率を高めようと取り組みました。なぜ97パーセントかとういと、95パーセントにしておくと急変などによりすぐ下がってしまい、80パーセント台まで落ちてしまうからです。そこで97パーセントにしておくと相談員も現場も安心しながらやっていけるわけです。毎日の目標を立てて、目標との誤差を把握することが大切で、それにより今は入所率が回復し、98パーセントや97パーセントということが多いです。ただし、月の半ばに中抜けしますから、月の初めの段階で数値を高く上げておくように努力しています。

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(つづく)

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