研究大会開きました(その16)

2014年5月19日|

【本間達也先生特別講演(13)

 今までなぜ入所率97パーセントができなかったかということですが、80パーセント台に落ちたときに、「幻の150名待機者」という話がありました。「これだけベッド稼働率が落ちてきたらまずいじゃないか」と言うと、相談員が「いや、150名の待機者がいるから大丈夫です」と答えました。この「150名」という数字は皆信用していたのですが、「これはおかしい、本当に150名いるのか」と分析してみたところ、なんとゼロだったんです。要するに死亡したり、介護付き有料老人ホームに流れていたり、よその老健や特養に行ってキャンセルになっているなどしてゼロだったわけです。

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 それからもうひとつ、相談員が一生懸命在宅強化型施設にするため復帰率を60パーセントに上げようとして、新しい人を入れる一方で、現場からは「女部屋に男を入れるのか、食堂に置いておくのか」と言われました。「これは現場と支援相談員が対立している。これではうまくいかない」と思いました。そこで去年の8月から相談員と現場スタッフが毎日5時半から545分の15分間、利用者や入所待機者の状況などについて話し合いを行いました。その中で、移室があると現場で一方的に移室を決めてしまい、予定していた入所を遅らせることもしばしばあったということがわかってきました。そして「ベッド調整は支援相談員がやるものだ」と思っていたのを改め、現在は現場職員でも移室することによって調整しなければならない入所待機者のことも事前に考えるようになり、ひとりひとりが入所率を意識するようになりました。現場の意見を取り入れることで、今までになくベッド調整に幅が出てきて、その結果、入所率も回復してきています。

 在宅復帰推進の課題ですが、「職員の負担が増えるのではないか」とよく言われます。しかし適切な情報収集と適切なケアができれば、法人や施設全体の雰囲気も変わり、「治して帰すんだ」と介護職員のモチベーションも向上して、更なる在宅復帰率アップにつながります。老健職員はプロの集団です。それぞれの専門性を活かし、他職種でチームアプローチを生むことが大事です。

 たしかに在宅復帰率は急に上がりませんし、簡単に在宅強化型施設にはなれません。しかしどういうものなにか、一応やってみることです。取り組んでいくことで、家族との関係もフィフティーフィフティーになってきました。それまでは「預けます、お任せします」だったのが、「うちも頑張るけど、おたくも頑張ってね。困った時は応援します」という家族が増えてきました。とにかくあきらめずにやってみることです。地域包括ケアの拠点として、老健での在宅復帰は総力戦です。

(つづく)

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