研究大会開きました(その18)

2014年5月21日|

【本間達也先生特別講演(15)

 

また、「法は不可能を要求せず」と言います。するべきことをきちんとしていて、それでも不幸にして事故などの結果が発生した場合は、法的責任は発生しません。この法的責任の視点からも、(1)リスクに対する感度を高める、(2)マニュアルの作成、カンファレンスや申し送りの徹底、記録化などにより情報を共有する、(3)インフォームドコンセント、(4)これらに関する職員の教育・訓練・・・などするべきことをきちんとする、すなわち基本に忠実であることが大切です。

 「過失の最小化」というスライドを示しています。以上のような対策や対応をとっていれば、多くの場合は責任が否定されるはずです。それでも裁判は個別具体的な判断であり、死亡事故が起きた場合、責任が肯定される場合もありますが、このような対策や対応をとっていれば、責任は最小限に評価されるはずです。つまり「結果の発生イコール法的責任の発生」ではない、ということです。

 最後になりますが、理不尽な訴えにどのように対応すればよいか、ということですが、まずはそれが理不尽な訴えかどうかを冷静かつ客観的に評価して下さい。そして理不尽な訴えであれば、説明を十分にし、毅然とした対応をすればいいわけです。つまり本日説明した対策をとっていれば恐れることはないのですが、ただし職制上、下位にある職員に任せきりにするのではなく、必ず管理監督者クラスが責任をもって対応して下さい。

このようにして「小さいことを大きく騒いで、結果として小さく納める」というトレーニングを常々施設でやれるかどうかがポイントです。小さい「ヒヤリ」を黙っていると、事が大きくなっても鈍感になってしまいます。要はリスクに対する感度を組織一丸となって高める訓練を日常的に実践することです。

「知識より意識」が大事です。健全な組織風土を常につくろうと組織全体として取り組もうとしているのかどうかが大事なことであり、何度も言いますがスタッフ全員でリスク感度を高めるトレーニングをすることが大切です。

今後最大のリスクになってくるのは人材だと思います。人材のことを各施設がどう考えていくか一番のリスクマネジメントになるのではないかと思います。長時間私の話を聞いていただいてありがとうございました。

BQ8V2278.JPG(講演おわり)

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