ターミナルケア学びました(看護介護部会:その4)

2014年3月7日|

ACPとは】

  看護介護研究部会主催の「高齢者のターミナルケア研修会」。東京都中央区にある聖路加国際病院の緩和ケア科部長、林章敏先生による講演は”ACP“についての内容に入りました。「『ACP』と聞いてもあまりピンと来ないと思いますが」と前置きし、林先生は次のようなスライドを示して話し始めました。

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この「ACP」とは「アドバンスケアプランニング(Advance
Care Planning)」の略で、「これからの過ごし方を話し合う」とのこと。そして、「DNARDo Not
Attempt Resuscitation)」は”リビングウィル(Living Will)”と同じようなもので”蘇生術(心臓マッサージや気管内挿管、人工呼吸など)を受けるかどうか”を話し合うこと。またアドバンスディレクティブ(Advance
Directive)は「自分が意識がなくなった時にこういう過ごし方をしたい」というのを自分で文書に残すこと(事前指示書)だそうです。そしてACPは「これからの過ごし方を一緒に考えましょう」というもので、文書に残すかどうかを問うものではなく、「話し合うこと」を言うのだそうです。

アドバンスディレクティブは一人で作成して残すものなので、他の人に伝わらない可能性があり、自分が望む最期を迎えられない可能性があるため、アドバンスケアプランニング「ACP」が出てきたそうです。これは「自分で意識がなくなった時や意思決定能力がなくなったとき、それ以上回復の見込みがなくなったときなどに、どういった事を大事にしたいか?どういうふうにしてほしいか?」などを「意識があって話し合える時に」話し合う、将来に向けてケアを計画するプロセスで、治療法の選択だけでなく、全体的な目標も立てるとのことです。また、一回きりではなく、意識や意思決定能力があれば何回も話し合って、内容を変更することができるものだそうです。

ただしACPは日本ではまだあまり普及していないとのこと。「作るのが怖い」「回復の見込みがあるのに、回復の手立てを施してもらえないのではないか?」「自分は意識があって本当は言いたいことがあるのに、拒否されるのではないか?」などと思われがちで、話し合いをすることに「気が進まない」というのが現状だそうです。

しかし、「話し合いは何回でもできるし、書き直しは何ででもできますから、あたかも契約書みたいに、『一度書いたらその通りにしないといけない』と思う人も多いのですが、書き直しは本当にいつでもできます。そしてなるべく直近で作ったものの方がその人の気持ちがわかります」と林先生。誕生日ごとなど、定期的に書き直す人もいるとのことでした。

そしてこのACPで一番大事なのは「自分一人でなく家族も一緒に話し合う」ということ。そのことによりたとえ自分の意識がなくなっても、「あのときはこんなふうに言ってました。こんなことを考えていました」と伝えることができ、その人の気持ちを大事にしてくれるからだそうです。「死について話をすることは気が進まないかもしれませんが、例えば病院を舞台にしたドラマで誰かが亡くなる場面を見ながら『あんな最期がいいね、ああやっていけるといいね』などと死にまつわるような出来事を語り合ってもいいわけです。そういったものが何もなければ何もわかりません。重要なのは書類を作ることが目的ではなく、一緒に話し合っておくことです」と林先生は何度も強調しました。

なお老健施設に勤務する者として関係の深い認知症の人の場合について、林先生は「その人と話し合うことがなかなかできない場合があります。そういうときは家族と話し合いますが、私たちは2つのことを聞きます。一つ目は家族としての気持ち。『こういう状況でこういう治療法がありますかどう思いますか?』と聞きます。そしてそれだけではなく二つ目には、『もし患者さんがここで意識があったとしたら、どんなことを言うでしょうか?患者さんだったらどう思うでしょうか?』ということを別に分けて聞きます。家族に患者さんの気持ちを推測してもらいます。この両方が大事です。そうすると家族は責任を一人で負わなくてもよくなります。スタッフも一緒になって話し合い、患者さんの気持ちを推測してもらうことで『自分が決めたけどよかったのだろうか?』と良心の呵責にさいなまれずにすみます。これは大きなことです」と、これら一連のプロセスの重要性を説明すると、受講者はそれぞれの施設での利用者や家族への対応を振り返りながら聞き入っていました。

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(つづく)

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