高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その5)

2014年10月10日|

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 最後に高齢者の総合的評価について学びました。「高齢者の総合的機能評価(CGAComprehensive
Geriatric Assessment
)」は、(1)医学的評価、(2)身体的評価、(3)精神・心理的評価、(4)社会的評価・・・の4項目から高齢者の総合的機能評価を行い、それをもとに適正な医療やケア、そして患者と家族のQOL(生活の質)改善をはかろうというもの。

そのスライドを示した上で田代学先生は「加齢に伴う機能の変化や多くの併存病による心身機能の障害、そしてそれらの影響による日常活動の低下に伴う心身機能の障害が健康の状態を規定し、高齢者の医学的・身体的評価は、青壮年のそれとは本質的に異なる問題を含んでいます」と指摘。さらに社会的評価については「その一つの場として生活の場があります」としながら、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加傾向にあること、「老老介護」が進み、認知症患者の介護をする70歳以上の家族の割合がこの30年で3倍以上に増えている現状などを紹介。「高齢者の総合的機能評価は((1)から(4)の)4つが複雑に連動しており、そのこと自体も心理的影響を与えています」と言い添えながら、「重要なのは”活動と参加”を続けること」と強調しました。そしてその理由を()自分を理解してくれる人が、自分にはいるのだという実感、()自分のあり方や行為が自分一人の中で終わらずに「他者につながっている」という実感、()自分が成長している実感・・・を本人が持ち、また周りからももたれるような環境づくりをすることで「幸福感、すなわち良い心理が生まれる」と説明しました。

 また、精神医学上や心理社会的、身体的、そして社会的に高齢者が個人レベルで補償や適応することができない諸問題があることに触れ、「医療や福祉、行政関係者などの介入が必要」と受講者に呼びかけました。

 そしてサクセスフル・エイジング(成功加齢)とは、「良好な機能的能力と社会的関わりによって評価される高齢者像であり、その心理です。そのためには高い自己効力や社会参加、身体活動の継続、そして生産的活動の継続が重要です」と帰結しました。

 2時間が短く感じられるほど内容の詰まった研修会も終わりを迎え、「加齢現象とは単なる衰えではなく、それを補償する方向性も内在していることや、高齢者の心理的過程を悲観的にではなく、死の間際まで心理的成熟や社会との交流の可能性があるものとして捉えていくべきです。そして自らもそうあることを今から準備するべきです」と講演を締めくくると、会場からは感謝の拍手が鳴り響きました。

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 老健施設のみならず、特養やグループホーム関係者など、高齢者に日々接し、寄り添うことを仕事としている受講者にとって、高齢者の心理を様々な角度から考えることのできた、大変有意義な研修会となりました。田代先生、本当にありがとうございました。

(終わり)

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