認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その8)

2015年3月25日|

「高齢者虐待や不適切なケアには背景となる要因が必ずあります」と語調を強めた浜砂貴美子先生。その要因を捉えるポイントとして、(1)組織運営は健全か?(2)負担・ストレスや組織風土の問題はないか?(3)チームアプローチは機能しているか?(4)倫理観を持ち、コンプライアンス(法令遵守)を考えているか?・・・の4点を示しました。そしてこれらが直接的に虐待を生み出さなくとも、放置されることでその温床となることや、背景要因は相互に関連していることが多いことなどを指摘しました。

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これを踏まえて、高齢者虐待や不適切なケアの防止策として、「1.組織運営の健全化」、「2.負担やストレス、組織風土の改善」、「3.チームアプローチの充実」、「4.倫理観とコンプライアンスを高める教育の充実」、「5.ケアの質の向上」の5つを挙げ、それぞれについて次のように説明しました。

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1.組織運営の健全化】

〇《「理念とその共有」の問題への対策》

・介護の理念や組織運営の方針を明確にする

・理念や方針を職員間で共有する

・理念や方針実現への具体的な指針を提示する

〇《「組織体制」の問題の対策》

・職責、職種による責任・役割を明確にする

・必要な組織を設置する

・職員教育の体制を整える

〇《「運営姿勢」の問題への対策》

・第三者の目を入れ、開かれた組織にする

・利用者、家族との情報共有に努める

・業務の目的や構造、具体的な流れを見直してみる

2.負担やストレス、組織風土の改善】

〇《「負担の多さ」の問題への対策》

・柔軟な人員配置をする

・効率優先や一斉介助、流れ作業を見直し、個別ケアを推進する

・最も負担の高まる夜勤時に特段の配慮を行う

〇《「ストレス」の問題への対策》

・職員のストレスを把握する

・上司や先輩が積極的に声をかけ、悩みを聞く

〇《「組織風土」の問題への対策》

・組織的な対策に一つずつ丁寧に取り組んで行く

・取り組みの過程を職員間で共有する

・負担の多さやストレスへの対策を十分に図る

3.チームアプローチの充実】

《「役割や仕事の範囲」の問題への対策》

・関係する職員がどの様な役割をもつべきかを明確にする

・リーダーの役割を明確にする

・チームとして動く範囲を確認する

《「職員間の連携」の問題への対策》

・情報を共有するための仕組みや手順を明確に定める

・チームで意思決定の仕組みや手順を明確に定める

・より良いケアを提供するためには、立場をこえて協力することが必要不可欠であることを確認する

4.倫理観とコンプライアンスを高める教育の実施】

《「非利用者本位」の問題への対策》

・介護サービスにおける「利用者本位」という大原則をもう一度確認する

・実際に提供しているケアの内容や方法が「利用者本位」に基づいているものであるかチェックする

《「意識不足」の問題への対策》

・基本的な職業倫理、専門性の関する学習を徹底する

・目指すべき介護の理念をつくり共有する

《「待・身体拘束に関する知識」の問題への対策》

・関連する法律や規定の内容を知識として学ぶ

・身体拘束を行わないケアや虐待を未然に防ぐ方法を具体的に学ぶ。覚えるよりも考える学習

5.ケアの質の向上】

《「認知症ケア」への問題への対策》

・認知症という病気やその心理について正確に理解する

・認知症に伴う行動心理症状には、本人なりの理由があるという姿勢で原因を探っていく

《「アセスメントと個別ケア」の問題への対策》

・利用者の心身の状態を丁寧にアセスメントすることがスタート

・アセスメントに基づいて個別のケアに応じたケアを検討する

《「ケアの質を高める教育」の問題への対策》

・認知症ケアに関する知識を共有する

・アセスメントとその活用方法を具体的に学ぶ(OJTの方法を工夫し、実践の中で学ぶ)

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(つづく)

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