認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その6)

2015年3月23日|

 「もしみなさんが認知症のため判断力がなくなったり、低減したりして、自分の利益を自分で守れなくなってしまったら、みなさんの人権や生命、そして財産はだれが守ってくれるのでしょうか?」と受講者に問いかけた社会福祉法人凌雲堂特別養護老人ホームしらふじの施設長、浜砂貴美子先生。そのために権利擁護の仕組みがあるとして説明をはじめました。

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 権利擁護とは「認知症高齢者や知的障害・精神障害により、自分の利益を自分の力で守れなくなってしまった人のために、人権をはじめとした様々な権利を保護したり、本人に代わってその財産を適切に管理したりすること。つまり個人がひとりの人として尊厳をもって生きていくことを生活上の重要な場面で支援すること」。そして支援するための仕組みとして(1)日常生活自立支援事業、(2)成年後見制度、(3)虐待防止事業・・・の3つがあることを学びました。

 このうち虐待防止事業については、「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律(平成184月)」を示し、「虐待防止は法律です。努力目標ではありません。また養介護施設従事者による高齢者虐待に係る通報が定められていますが、これは従事者などによる虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、市町村に通報しなければなりません。『通報した方がいい』ではありません」と述べ、同法が高齢者の生命を守るだけでなく、個人として尊重や幸福追求権の保障をも視野に入れた人権救済や保護を目指していることを強調しました。

 続いて、老健や特養、グループホーム等の施設を対象に平成11年規定された身体拘束禁止について、対象となる11項目(※)を示した後、「魔の3ロック」として縛ったり押し込めたりする”フィジカルロック”、薬でおとなしくさせる”ドラッグロック”、強い口調で心身の動きを封じる”スピーチロック”を上げ、それらが認知症を悪化させることを指摘し、施設の運営規定に身体拘束廃止を明記するとともに、それを実践することの重要性を訴えました。

【※身体拘束の対象となる11項目】

(1)徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひもなどでしばる

(2)転落しないようにベッドに体幹や四肢をひも等でしばる

(3)自分で降りられないように、ベッドを柵(サークル)などで囲む

(4)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように四肢をひもなどでしばる

(5)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋などをつける

(6)車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がらないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける

(7)立ち上がる能力のある人の立ち上がるを妨げるような椅子を使用する

(8)脱衣やおむつ外しを制限するためにつなぎ服を着せる

(9)他人への迷惑行為を防ぐためにベッドなどに体幹や四肢をひもでしばる

(10)行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に飲ませる

(11)自分の意思で開けることができない部屋に隔離する

(つづく)

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