認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その7)

2015年3月24日|

 平成113月に定められた厚生省(現厚生労働省)令における身体拘束禁止規定は、平成184月に制定の高齢者虐待防止法となり、養護者による高齢者虐待、そして養介護施設従業員等による高齢者虐待が禁止され、発見した場合の市町村への通報が義務づけられました。浜砂貴美子先生は高齢者虐待の内容として「身体的虐待」、「介護・世話の放棄・放任」、「心理的虐待」、「性的虐待」、「経済的虐待」があることを説明しました。

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 その中で、「介護の現場で、利用者に対してついつい命令口調で話したり、子供扱いをしたり、無視や気がつかないふりをしたりしますが、これらは心理的虐待です。これは特に認知症の人にとって認知症を悪化させる要因になります。ここからPTSDが出て来ます」と日々の利用者に対する言動が、知らず知らずのうちに不適切なケア、そして虐待につながりかねない危険性をはらんでいる事を指摘しました。

 そして、「不適切なケア」を底辺部、「顕在化した虐待」を頂点部とし、その中間部が意図的虐待と非意図的虐待が混在する「グレーゾーン」で構成される正三角形となっている「『不適切なケア』を底辺とする『高齢者虐待』の概念図」をスライドに示し、「グレーゾーンの内容は施設によって違ってくるはずです。例えばセンサーマットなどはグレーゾーンに入るもので、ナースコール代わりに使っている利用者もいるし、『いやだ』と思ってマットを飛び越えて転んでしまう人もいます。本人のために必要かどうかというアセスメントが不可欠で、本人の意向に沿わないケアが常態化し、当たり前になってそれをずっと続けていると虐待になってしまいます。『自分だったらこのケアをされたらどうだろうか?』と考える事で、不適切なケアや虐待に近い行為は減っていくと思います」とし、受講者にそれぞれのケアの現場を振り返るよう促しました。

 これらを踏まえて浜砂先生は、高齢者虐待や不適切なケアの背景となる要因を捉えるポイントとして、(1)組織運営は健全か?(2)負担・ストレスや組織風土の問題はないか?(3)チームアプローチは機能しているか?(4)倫理観を持ち、コンプライアンス(法令遵守)を考えているか?(5)ケアの質は保たれているか?・・・の5つを挙げました。そしてこれらが、(a)直接的に虐待を生み出さなくとも、放置されることでその温床となり、虐待の発生を助長する、(b)「不適切なケア」の背景要因としても捉えられる、(c)背景要因は相互に関連していることが多い・・・とし、高齢者虐待や不適切なケアを防止するにはどうするべきか?という説明を始めました。

(つづく)

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