Masaさん(菊地雅洋氏)第2弾講演会開きました(事務長会&看護・介護部会:その14)

2015年10月27日|

 (公社)宮崎県老人保健施設協会事務長会と看護・介護研究部会が103日、宮崎市のシーガイアコンベンションセンターで合同開催した「masa氏 第2弾講演会」もいよいよ終盤になりました。400人の受講者で埋め尽くされた会場を見渡しながら講師の特別養護老人ホーム緑風園総合施設長の菊地雅洋先生は「忘れないでほしい事
『我々の職業とは誰かの心に咲き、誰かを慰める赤い花になれる可能性を持つ仕事。』」というスライドを示しながら語りかけました。「介護報酬の問題を耳にしたり高齢者施設での虐待報道などを見せられたりすると『意欲がなくなった』と言う人がいますが、我々の現場から、今我々ができることから幸せを作っていけばいいじゃないですか。そもそも介護というのはひとりひとりの利用者の心に咲き慰める赤い花のように、可能性を持つ仕事だと思います。ひとりひとりが誰かの心に咲く赤い花になろうとすれば、この仕事もおもしろさが見えてくるのではないでしょうか。事前にいただいた質問の中で『20代の介護福祉士。今は体力的に自信があるが、年齢を重ねるとどうなるか不安。仕事を続けていく原動力とは何か知りたい。施設での転落死をテレビで知り原動力が失われそうだ』というものがありましたが、赤い花になることです。そのことを誇りに思ってほしいと思います」。

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 「赤い花」という言葉に受講者からはハッとした表情が伺えました。というのも講演会のサブテーマでもあり、また会場でも販売が行われていた菊地先生の著書「人を語らずして介護を語るな THE FINAL 誰かの赤い花になるために(ヒューマンヘルスケアシ・ステム、税抜き価格1,800円)」のキーワードである「赤い花」という言葉を、菊地先生が講演の本論に入って初めて口にしたからです。

 続いて菊地先生は「やわらかな 日差し溢れる特養に 私を忘れた あなたが笑う」という短歌を紹介しました。これは平成22年度 NHK介護百人一首」に寄せられた8,332首の中から選定された100の中の一つ。70歳代後半のこの作者は、認知症のご主人をやむを得ない理由で特養に預けた女性。入所当初は心配も少なからずあったものの、その特養がとても良い施設であり、職員が親身になって世話をしてくれ、自分の顔すら忘れてしまったご主人ですが、施設を訪れると家でも見せたことがないような笑顔で会話しており、その姿を見て「よかったなあ」と喜んでいる様子をよんだ作品だそうです。

 その上で菊地先生は「このように介護というのは目の前の誰か一人を幸せにすることによって、幸せになるのはその人だけではなく、その周りの色々な人が幸せになります。作者の女性はこのような短歌をよむくらいだから、この気持ちを家に帰っても自分の子供に話すわけですよ。するとそれを聞いた子供達も気持ち良くなります。またそれを聞いた孫たちも『おばあちゃん良かったね』と喜びます。そうすると介護というのは誰か一人を幸せにすることによって、その周りにたくさんの幸せや笑顔を作ることができる素晴らしい仕事だと思います。そういう素晴らしい職業にみなさんが就いていることをどうぞ誇りに思っていただきたいと思います。僕はこのことを『無限に広がる幸せ樹形図。介護はその樹形図を作ることができる尊い仕事である』と思います」と、木々が一本の幹からどんどん枝を増やし伸ばしていくように、介護の仕事も一人の利用者を幸せにすることが数多くの人を幸せにしていく誇りある仕事だと強調しました。

 その一方で菊地先生は、講演の冒頭で紹介した高齢者施設での虐待報道に触れ、「とてもじゃないけれどもそれとはかけ離れた状態です」と厳しく言い放ち、「不幸を作り出すのか、幸せを作り出すのか?どちらを作りたいのかにかかっているのではないでしょうか。どうせ作り出せるものがあるならば、人の悲しみを作り出して、それをあざ笑うような人格になるのではなく、人の幸せを作って、その無限に広がる幸せ樹形図を描く人になってみんなを幸せにし、そのことによって『ありがとう』という言葉をこの宮崎にあふれさせる。それだけで日本は変わるかもしれません。どうぞそういう気持ちを持って介護に携わって下さい」と訴えると、400人の受講者はそれに呼応するようにうなずきながら聞き入っていました。

←「その13」に戻る)             (つづく

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