やまいもをほる
たしかにヤマイモ(山芋)の茎は、ほかの何かに(左巻きに)からまって伸びていきます。酔っ払って他人に絡む姿もそれに似ていると言えば似ています。しかし、「やまいもを掘る」となると、これはまた別な意味合いが出てきます。あの円柱状で、地中深く長く伸びる山芋のイモ(塊根)を掘るためには、同じ所を何度も何度もしつこく、くどくどと掘り下げていかなくてはいけません。途中で油断するとせっかくのヤマイモがポッキリ折れてしまいます。大変な作業ですので、ヤマイモの塊根のような根気、そしてとろろ汁のごとき粘り強さが要求されます。
そのような事から、(酔って)同じことをくどくどと繰り返して、他人にからむことを「やまいもをほる」と形容するようです。確かに言い得て妙なる表現だと思います。しかしその反面、あの美味なるヤマイモに申し訳ない気もします。ヤマイモが聞いてたら「オレ、そんなんじゃねえよ!」「わたしのこと、酔っ払いと一緒にしないでよ!」(注:ヤマイモは雌雄異株です)と絡まれそうです。これぞ「ヤマイモがやまいもをほる」ということになるかも。
現在市場に出回っているヤマイモは、しつこく掘り下げて採る天然のものではなく、畑にパイプを水平に埋め、その中で栽培する方法がとられているようです。ヤマイモ(というか畑イモ?)は横に伸びていきますから、「やまいもをほる」作業は、くどくなく、しつこくもありません。ですからこの際、酔って他人に絡む方の、迷惑な「やまいもをほる」というのもやめてはどうでしょうか!?郷土が生んだ国民的歌人、若山牧水も「酒はしづかに のむべかりけり」と詠んでいるではありませんか。