研究大会開催しました〔特別講演その2〕

2012年3月23日|

  次に、口腔内細菌と、誤嚥性肺炎については、夜間に気付かない間に、唾液や逆流した胃内容物を少量ずつ誤嚥する「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」の説明がありました。これは、口腔細菌を含む口腔や咽頭の分泌物や食物を誤嚥することにより引き起こされる、誤嚥性肺炎(老人性肺炎)を引き起こす可能性が高いという指摘がありました。

 これに対し、口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎を予防する効果があるとのことでした(特に終末期は重要なのだそうです)。

 続いて、在宅で最期まで口から食べる事への取り組みについては、まず胃ろうを自己抜去した翌日から100%経口摂取に移行した要介護高齢者症例が紹介されました。この方は、誤嚥性肺炎を繰り返すため、胃ろうを増設し、また認知症のため、経管注入中は拘束され、ベッド上での生活を送られていたのだそうです。在宅に移って拘束をはずしたところ、2週間後に胃ろうのボタン型バンパーを自分で抜き取ったため、翌日から経口摂取することになったとのことでした。宇都先生はそのために、主治医や歯科衛生士、訪問看護師、訪問リハビリ、ヘルパー、そして家族と、「人間が食べられなくなる、老いていくプロセスをどう受け止めていくか?」ということについて真剣に話し合い、口から食事をするために、評価を行い、食事を工夫し、嚥下訓練を行ったそうです。

 その結果、その方は食事を自分で食べるようになったばかりでなく、自分で歩けるようになったり、家族とピクニックを楽しむまでになったそうです。誤嚥性肺炎も減ったとのっことで、その模様が写真や動画で紹介されると、またまた会場からは驚きの声が上がりました。嚥下リハビリの目的は、「誤嚥しないことではなく、QOLを維持しながら誤嚥性肺炎の発症を防ぎ、生命予後を高めること」との説明に、受講者はうなずいたり、メモを取るなどして、真剣に聞き入っていました。

 この、最期まで口から食べることへの取り組みを紹介した上で、宇都先生は細菌、要介護高齢者の胃ろうの是非について、胃ろうを作ってきた医師の間で論争が起こっていることに言及されました。これは、(1)人工栄養法を導入しない選択肢を示す、(2)本人の益にならないと判断できるときは導入しない、(3)人生の完結に有益なときの導入は妥当・・・等を内容とした指針案を、厚生労働省が昨年124日、初めて公表して以来、マスコミなどでもしばしば取り上げられている問題です。その現状を踏まえ、宇都先生は、「尊厳を守り、最期まで口から食事が取れるよう、継続的な支援が必要。そのために、医療や介護に関わる人が職域を超えて連携し、家族や地域住民とも協力できる在宅医療の構築をめざして取り組んでいる」と、口腔ケアに対する熱い思いを力説。受講者の胸を打っていました。(続く)

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