第15回大会開きました(その16)

2019年1月24日|

 石川理事長の講演は続いて、いしかわ内科における看取りの現状について、図表を用いて説明がありました。

それを踏まえて現在の在宅医療の問題として、「医師や看護師不足」「自宅以外の居住系施設での看取りの場合、24時間対応できる看護師がいない施設が圧倒的に多い、訪問看護が入れなかったり、家族との信頼関係を醸成しにくかったりする」、さらに「高齢者が自分自身の最期をどのように迎えたいのか意思表示がなされていないことが多い」「家族の側に家で看取ることの理解が進んでいない」などが挙げられました。

また「介護老人保健施設と在宅支援診療所における連携上の問題点」として石川理事長は、

(1)老健施設から自宅へ戻る人があまりいなかったため、在宅支援診療所への依頼が少なかった

(2)急性期の医療施設から老健施設に入るまでの過程における医療情報が、在宅支援診療上側に伝わらないことが多い

(3)老健施設でのリハビリの情報が、在宅でのリハビリスタッフに伝達されていないことが多い

(4)急性期の病院から自宅に戻る際には退院前カンファレンスが行われるが、老健施設から自宅に戻る際に、退所前のカンファレンスが行われる事が少ない

の4つを呈示して会場を見渡すと、聞いていた老健役職員はそのひとつひとつを自施設の状況と照らし合わせていました。

そして「自宅で過ごすことの意味」として、患者自身にとっては「家では自分自身が主になれる。自分のペースで過ごせる。思い出がいっぱい詰まっている」など、そして家族にとっては「自分たちの日常生活を続けながら介護ができる、家族一緒になって寄り添える、主体的に介護に携わることで看取りへの心の準備ができる」などを挙げた石川理事長。実際に自らが「最期まで住み慣れた家で過ごしたい」という患者とその家族の支援に携わった事例を紹介。その中の患者の一人が最期の時を迎えようとしている時に、ご自身の奥様がクモ膜下出血で倒れたことに触れ、「医師として、家屋として無力感にさいなまれた」と苦しい胸の内を吐露。その上で「人は必ず元気な時にこそ、大切な人としっかり向き合い、感謝しあって生きることが、死を豊かなものにしてくれます」と、死を普通の生活の場に戻し、無常観と覚悟を持つことの大切さを伝え合う事が命のかけがえの無さを体得できる唯一の方法であり、そのために在宅医療を希望する人への医療者の支援が不可欠であることを強調し講演をしめくくると、会場からは感謝の拍手がおくられました。

(つづく)

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