介護ロボット宮崎フォーラム開きました(その2)
最後に「ICT・介護ロボットを活用した特養等の実践と介護人材確保対策について ~根拠のない恐怖は無視すべきである~」と題し、社会福祉法人スマイリング・パークの山田一久理事長が演台に立ちました。
「根拠の無い恐怖は無視すべき」はアメリカの実業家でエンジニアのイーロン・マスク氏の言葉。介護の現場にAI、ICTそしてロボットの導入にためらう声がある事に対し山田理事長は開口一番「その恐怖が合理的であり、冷静に考えて失敗する可能性が高い場合でも、それが挑戦に値することであれば、その恐怖をやり過ごして前に進むべきです。たとえ失敗したとしても、挑戦する価値はあります」と同氏の言葉を引用し、同法人の特別養護老人ホーム、ほほえみの里におけるICT等導入の事例について話し始めました。
ICT等導入前のほほえみの里では25パーセントという高い離職率(2003年)、業務の非効率化、タイムカードによる勤怠管理などの課題をかかえ「本当に大変でした」と振り返りました。そこで2011年からICTを導入したものの、当初はコストの問題に加え、コンピューターを不得意としている職員が多く反対の声が上がったり、情報漏洩に対するマイナスリスクへの不安があったりしたそうですが、「根拠のない恐怖は無視すべき」と、それぞれへの対策を講じ導入を進めていったとのことでした。
まず、記録の電子化および音声入力システムを導入。これにより大幅な業務効率化がはかられたことはもとより、申し送りの時間を見直し、システム上の記録確認で対応することで交代時に人員が重なる時間を短縮し、人件費も削減。何よりも職員の意識が入所者へのケアに集中し、ケアにかける時間を増やすことができるようになったのが大きかったそうで、職員の労働環境改善がはかられたそうです。
これに加え同法人では見守り支援システム、多職種連携情報共有システム、ケア・コミュニケーターなどのICTシステムの導入を進めるなど、「未来を見据えICT等を取り入れた人づくり」により職員は大きく成長したことを紹介した上で「私たちの目標」として「働く人の幸福度を追求し続ける」を掲げた後、笑顔で活き活きと仕事に励んでいる職員の様子を紹介すると、受講者は身を乗り出して見入っていました。
そんな受講者を見渡しながら、「かつて25パーセントあった離職率は平成30年度で5パーセントに減りました」と、ICT等の導入で離職率が下がり、やりがいを持って働ける職場づくりによりサービスの向上がはかられた事を説明すると、受講者は納得の表情でうなずいていました。
山田理事長が受講者一人一人に語りかけるように、わかりやすく行った講演は、今後のICT・介護ロボットの導入が、現在介護の現場が抱える諸問題を解決し、介護を受ける人が幸せになるのはもちろんのこと、介護にあたる職員もまた幸せになり、皆で幸せをわけあえる事ができるようになることを実践で示した、大変学びと感動の多いもので、会場からは感謝の拍手が送られました。
(つづく)