FR活躍

2013年3月6日|

 昭和の後期、「FFか?FRか?」などという論争、じゃないけど比較が盛んになされていたことがありました。自動車の話です。

FFは”front engine
front drive
“。車体前部にエンジンがあり、前輪駆動。一方FRは”front engine
rear drive
“。エンジンは前で後輪駆動。従来の主流だったのはFR車で、後輪に動力を伝達するためのシャフトがあるため、車内の床はそこの部分が盛り上がっており、後部座席の真ん中に座る人にとっては脚を曲げて窮屈な格好を余儀なくされたものでした。

 これがFF車になると車内はすっきり、ひろびろ。いろいろ利点が出てくる一方で、ハンドルが重くなったり、前のタイヤ負担が増えたり、アンダーステアが出たりするなどといって、「やっぱりFR車の方がいい!F1(フォーミュラ?1)マシンが前輪駆動にならない限り、俺はFR車に乗り続ける!!」という人もいたりしました。中にはFR車の特性を使った「ドリフト走行」で峠道を飛ばしていたドライバーもいましたが、これを公道で行うことは大変に危険な運転行為ですので絶対にやってはいけません。走行しているうち、じゃなくてそうこうしているうちに、乗用車のほとんどはFFになっていきました。ハンドルもパワーステアリングになり、変速装置もマニュアルからオートマチックになるなど、様々な変容を遂げてきました。

 えっと、これとは全く違う「FR」の話です。228日の日本経済新聞の記事に「『FR隊』出動」という活字がありました。これは自動車ではなく、「ファーストレスポンダー(FR)隊」のこと。「呼吸や意識が突然なくなった人に対し、消防から連絡を受けた近隣住民(FR隊)が救急車の到着前に心肺蘇生法を実施する」という石川県加賀市でスタートした、全国初の取り組みに関する記事でした。

 消防は蘇生法が必要な人がいると、その近くの住民で、蘇生法を学んで登録したボランティアのFR隊にメールを一斉送信。いち早く駆けつけたFR隊は、救急車が到着するまでの間、救命措置を行うとのことです。

 「病院で起きる心筋梗塞の死亡率は5%程度だが、自宅で発症してしまうと、近くの人が何をできるかで救命率が大きく変わる」との専門家のコメントも紹介されていましたが、こういう”FR”なら宮崎県はもちろんのこと、これからどんどん全国に広まっていくといいと思いました。当然ではありますが、蘇生法が必要な人の所に行くのに前輪駆動か?はたまた後輪駆動か?なんてことは関係有りません。重要なのはできるだけ早く「けつけ、行する」こと、そして心臓マッサージやAEDによって心臓に「動力を与えて動かすこと」です。おっと、この「動力を与えて動かすこと」こそ、『広辞苑』に明記されている「駆動」の意味するところでありました。

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