研修会を開きました(在宅支援部会)
講師にはデンマークからベンツ・ラワーセンさん、いつみ・ラワーセンさんご夫妻にお越しいただきました。ベンツ・ラワーセンさんは、障害児の福祉に関するデンマークの国家資格「ペタゴー」を持ち、オトゴップガーデンの施設長の他、障害者の在宅自立支援訪問チーム長も兼任されています。いつみ・ラワーセンさんは、かつて介護老人保健施設サンヒルきよたけ(宮崎市清武町)で介護福祉士として勤務されており、その縁あって、今回の研修会が実現しました。会員施設等から63人が参加し、会場は熱気に包まれました。
2006年の調査で「世界で一番幸福な国」となったデンマーク(これに対して日本は何と90位!)。その介護と福祉の実際について、実例を交えながら、わかりやすくお話ししていただきました。
「世界一幸福な国」であるために、デンマークの社会サービスは「平等」ではなく「公平」の考え方を取り入れている、ということでした。これは、全員に差別無く同じサービスを提供する「形式的平等」ではなく、一定のレベルの生活の質に対し、不足しているところを必要な分だけを提供してやることで、皆の生活の質が一定のレベルから落ちないように支え合おうとする、「実質的平等」を目指そうというものだそうです。そして、そこが日本の考え方とは異なるのだと強調されていました。
いつみ・ラワーセンさん。「平等ではなく公平」の説明に、一同納得。
そのために、所得税は45%?67%、消費税は25%と、デンマークの税率は日本のそれよりかなり高くなっていますが、それが国民の義務であり、国民はそれを果たすことで、国民の権利である生活の保障が約束されている、という国と国民との信頼関係ができているとのことでした。
また、デンマークの高齢者福祉生活と住まいの変遷について触れられました。従来の「プライエム」という介護提供型の施設では「高齢者は介護を受ける人」と考えられていたのが、1987年に高齢者・障害者住宅法が成立してからは、プライエムの建築は禁止。「プライエボーリ」などの高齢者住宅がこれに取って代わり、高齢者は「自立して生きる人」として、自立支援型の介護観のもと、残っている能力を活かし、自己決定を尊重した、生き生きとした人生継続できるようになったとの説明に、参加者達はうなずいたり、メモを取ったりして聞き入っていました。
ベンツ・ラワーセンさん。デンマークと日本の考え方の違いを解説して下さいました。
なお、日本で言うところの母子手帳には「あなたの子供は、あなたの子供ではない」と書いてあるのだそうです。これは、子供は両親だけの所有物ではなく、国の将来を担う「国家の財産」と位置づけられています。そのため、幼稚園から大学まで学費は無料とのこと。そのほか、「世界一幸福な国」を裏付ける様々な充実した福祉制度などの話題がてんこ盛りで、驚きと感動の連続。あっという間の2時間でした。
熱心な質問が相次ぎ、時間をオーバーしても会場の熱気は冷めませんでした。
いつみ・ラワーセンさんの里帰りの機会に合わせて開かれた研修会とはいえ、遠く離れたデンマークの福祉と介護の現状について、生の情報を拝聴することができた貴重な研修会となりました。