まぐろとベンコ

2011年12月29日|

  良い意味で「日本一」というのは手放しに素晴らしいものです。今月4日に開かれた、魚を使う料理コンテストで、延岡市の女子高生が全国2600人の頂点に立つ最優秀賞の「農林水産大臣賞」を受賞したとのこと!高校生だけの大会ではありません。主婦など一般の参加者も並み居る中での堂々の一番だからよけいにすごい事です。名だたる強剛実業団マラソン選手達をまさしく「尻目」にし、堂々日本人トップでゴールした公務員ランナーと同じくらいか、それ以上にすごいことです。

 全国漁業協同組合主催のこのコンテストで最高の栄誉を獲得したその料理の名前は「ゴマをまとったマグロのソテー・アジアンテイスト」。22日の朝日新聞によりますと、「(宮崎)県産のマグロを、中は生の部分が残るようにソテーし、春巻きなどに使うスイートチリソースと一番だし、レモン汁などのソースで絡めた」とのこと。もうこれを読んだだけでも流涎ものです。しかし残念なのは、新聞ではその味がわからない!!ということ。何度読んでもお中が空いてくるばかりです。延岡と言えばチキン南蛮発祥の地。今度は「ゴマをまとったマグロのソテー・アジアンテイスト」が宮崎の新しい味としてブレークしていくといいなあ、と思います。

 さて、まぐろつながりで言えば、日南市油津港は全国有数のまぐろ基地として知られています。それを象徴するように、「まぐろ音頭」という歌があります(作詞:矢野不二男、作曲:長津義司)。

 

 沖は荒れよがヨー 命を的よ 

船はともづな船はともづな唄で解く ソレ

ミナトアブラツ マグロノヤマニ

センリョ マンリョノ ハナガサク

 

いかにも威勢と景気と縁起が良い唄です。昭和11年にレコード化されたとのことですから、同港が東洋一のまぐろ基地としてにぎわっていた頃の様子が目に浮かぶように歌われています。

 ところで、「まぐろ音頭」の裏面に収められた「ベンコ節」というのがまたすごい!作詞がなんと、あの、野口雨情(明治15?昭20)ではないですか!「赤い靴」や「しゃぼん玉」や「あの町この町」や「十五夜お月さん」や「七つの子」や、「波浮の港」や、それからそれから・・・。上げればきりがない、あの野口雨情です(作曲:村岡素芳、編曲:杉田良造)。

 

 ハァー 日向油津あの津の峯は 

船の便りか船の便りか ヤレホイ目じるしか

 コリャ ベンコヤマカラ マグロハ ウミヨ

 ホンニ アブラツ ヨイトコロ ササ ウタヤンセ

 

 『油津』(NIC21〈日南市産業活性化協議会〉編、鉱脈社)によりますと、この曲は昭和10年、野口雨情がまぐろ景気に湧く油津港に立ち寄って作ったのだそうです。地元の人たちのもてなしもさぞかしすごかったことでしょう。「東京ガールズコレクション」が、宮崎で開催されたのと同じか、それ以上にすごかったのではないでしょうか。

 「ベンコ」とはすなわち「弁甲(べんこう)」。木造船用材のことを言います。弁は「弁才船」から、甲は柱をつなぐ材を「長押(なげし)」と言った類の押が、いつか「甲」となって船の材「弁甲」となった、という説が有力とのことです。『大辞林』(三省堂)で調べると、「杉丸太を太鼓落としに削(はつ)ったもの。宮崎県の飫肥(おび)杉が有名」と名指しで記載されているほど、粘りがあり、水に強い飫肥杉は名実ともに日本一と言えます。野口雨情も「ベンコ節」を次のように続けています。

 

 ハァー 船で積み出す飫肥杉弁甲

 今日も油津今日も油津 ヤレホイ港から

コリャ ベンコヤマカラ マグロハ ウミヨ

 ホンニ アブラツ ヨイトコロ ササ ウタヤンセ

 

 この「ベンコ節」は、なんとユーチューブで検索すると聴くことができます。是非一度耳を傾けてみて下さい。思わず踊りだしたくなるような名曲です。

 まぐろとベンコ。新しい「日本一」と、古くからの「日本一」。宮崎って本当に素晴らしいものがいっぱいだと思います。もうすぐ2012年。良い意味で、くれぐれも良い意味で、宮崎の「日本一」がたくさん出てくる年になるといいなあ、と思います。

« 前のページに戻る

TOPへ