うなめんこんねだん

2011年7月11日|

  「うなめんこんねだん」・・・「それはなんじゃろか?」と首を傾げる宮崎県民は少なくないはず。これは、「”うなめ”の”子”の”値段”」です。そして”うなめ”とは、「メスの牛」のこと。つまり、「雌牛の子どもの値段」のことを、「うなめんこんねだん」と言うわけです。実は、この「うなめ」。てっきり宮崎弁だと長年信じ込んでいたのですが、広辞苑にはちゃんと載っている共通語だと知ってびっくり!また、「うなめ」に対して、雄牛のことを、「こち」とか「こってい」と言いますが、これもまた広辞苑に「こっていうし」とありました。二度びっくりです。

 新聞の占いは読み飛ばすけれど、家畜の「競り市」のコーナーは必ず目を通します。宮崎県の基幹産業は農業、そして、畜産業、とりわけ牛の占める割合は高いことから、「宮崎の牛の価格の動向が、宮崎県の元気の目安だ!」と勝手に決めつけて、注目しているのです。もちろん、全くの個人の考え、思い込みです。あしからず。

 県内の家畜市場で開かれる子牛の競り市には、全国からバイヤーが参加するそうです。「宮崎牛」で名実共に日本一の栄誉に輝いた、ブランド牛ですが、宮崎の子牛は、県外からも高い評価を受けており、全国各地で育てられ、それぞれのブランド牛となっていきます。「うなめんこんねだん(雌子牛価格)」は、かつては平均で50万円を超えるときもあって、「よーし、今日も宮崎は元気だ。頑張るぞー!」と嬉しく見ていました。

 ところが、昨年の口蹄疫被害は、県内で猛威を振るい、29万頭もの家畜が犠牲になりました。このことは、畜産農家はもちろん、広く県民に大きな打撃を与えました。新聞からは「競り市」のコーナーがなくなりました。それは紙面全体からすれば、ちっぽけなスペースだったのですが、いつもそこにあるのが普通だった。その普通にあったものが無くなってしまって、少なからぬショックを受けました。代わりに、口蹄疫被害関連の記事が毎日掲載され、一日も早い事態の終息を祈らずにはおれませんでした。

 そして、昨年828日、やっと口蹄疫の終息が宣言されました。それから幾多の試練や困難を経て、10ヶ月余りたった今年の77日、新富町の児湯地域家畜市場で開かれた子牛の競り市には、口蹄疫発生後から初めて都農町からの出場があったそうです。それを知って、復興への歩みは、着実に前に進んでいるのだ、と実感し、嬉しくなりました。この日の「うなめんこんねだん」は平均398,662円。全国的に枝肉相場が落ちている影響で、先月より下がったものの、県外バイヤーの高評価が価格を下支えし、下げ幅は最小限だったそうです。畜産農家の方々、JAや行政関係者、地域住民に県内外の関係者の人達のたゆまぬ努力と支援には、ただただ感服するばかりで、胸に熱いものがこみ上げて来ました。

 大事なものを失って、それから復興へ向けて歩み出す・・・。それは、老健を利用して下さる方々についても、相通ずるものがあるように思えます。失ったものは人によって様々で、受け止め方も違えば、復興のしかたや、目指すべきゴールも一人一人違います。だから、ケアプランも一人一人違うわけです。老健に勤める者として、そのお一人、お一人に対し、その人その人に応じたサポートを、各職種が連携し、一体となってやっていかなければならないと思います。一朝一夕には復興はかなわないかもしれない。でも、一歩一歩、その人に応じた速さで、共に歩んでいく事が大切です。のろいことを「牛歩」と言いますが、たとえゆっくりでも、前に進んでいくことが大事なのではないでしょうか。一人の一歩はちっぽけだけど、みんなで踏み出せば、大きな一歩になる。「うなめんこんねだん」をチェックしながら、今週も頑張ろうと思います。

 

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 これを書いている最中に、福島県南相馬市の牛から、放射性セシウムが検出されたとのニュースが飛び込んできて、一年前の辛い気持ちがまた蘇ってきました。もちろん、農家には全く何の責任もありません。そしてこの事態が、これからどうなっていくのか、予想だにできません。ただただ、いち早い終息を祈るばかりです。

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