ジャマイカ人間

2012年8月23日|

 「ジャマイカ人間」という言葉を聞いたことがあります。と言っても国名のジャマイカではありません。「じゃ、まあいいか」という意味での「ジャマイカ」です。カリブ海にあるジャマイカとは全く関係ありません。

 これは「小さな出来事や失敗を気にしてくよくよせず、”じゃ、まあいいか!”と気持ちを切り替えて、前向きな人間になろう」という事を「ジャマイカ人間になろう」と言い表したものです。

 87日の宮崎日日新聞のスポーツ欄を読んで、まさにその「ジャマイカ人間」の言葉が頭に浮かびました。ロンドンオリンピック男子100メートルで金メダル!(そして200メートルでも金!さらに400メートルリレーは世界新記録で金!!)北京五輪に続き見事連覇を果たしたウサイン・ボルト選手に関する記事を読んだ時のことでした。

 昨年の世界選手権決勝で、世界中が驚いたフライング失格。もともとスタートが得意でなかったボルト選手、世界記録を求めてはやる気持ちが失敗につながったとのことでした。

 その後、スタート技術の改善に取り組んだもののうまくいかなかったのだそうです。さすがのボルト選手も、色々と思い悩んだことと察しますが、そんな中で導き出した結論がすごい!なんと「心配しても仕方がない」なんだそうです。割り切ってスタート練習にさく時間を少なくしたことが、精神的にも奏功したとのこと。つまり、「じゃ、まあいいか!」と気持ちを切り替えたことで、ボルト選手は新たな伝説を作ったたわけです。

 ところで、1980年第14回リハインターナショナルによる80年代憲章によるリハビリテーションの見解には次のようなくだりがあります。

 「リハビリは、障害を持った個人がなし得ないことよりも、残された能力によって何をなし得るかが重要であるという哲学に基づいている。各人が有する全ての能力を最大限に活用した生活へのアプローチである。」

 つまり、失われた機能やできない能力を取り戻すことにいつまでもこだわるのがリハビリではなく、残された能力によって何ができるか?それを最大限に生かしていくことが大事だと言えるわけです。そこで「じゃ、まあいいか」という「ジャマイカ人間」的発想が必要になってくるのではないでしょうか。

 利用者様の能力を正しく評価して、できることは自分でしてもらい、できないことを手助けするのがリハビリテーション介護です。その中で、「ジャマイカ人間」的発想が必要な場面もあるのではないか?スプリンターにとって生命線とも言えるスタートへのこだわりを捨て去り、偉大な結果を残したボルト選手の姿に、そんな思いがふっと浮かびました。ご周知の通り、ボルト選手はジャマイカ代表。しつこいようですが、そのジャマイカと「ジャマイカ人間」とは関係ありませんので念のため。

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