吸い取り紙のように聞け

2013年1月3日|

 12日は書き初め。全国各地で老若男女が墨をすり、筆を手にする姿がテレビでも紹介されました。普段の半紙とは違う書き初め用紙に向かうと、気持ちが新たになり、「今年も頑張って上達するぞ!」と子供心に誓った思い出がよみがえりました。気持ちとはうらはら、一向に上達することはなかったのですが<(_ _)>

 その書道の時、文字がにじまないように吸い取り紙を使うわけですが、「吸い取り紙のように客の意見と声を聞け」と言ったのは稲生武さんだそうです(『生きるヒントになる名語録728』轡田隆史監修、橋本一郎著、三笠書房)。

 なるほど、吸い取り紙は吸わねば役に立ちません。その名の通り吸い込みがいいです。にじみだしそうな墨をたちどころにチューッと吸ってくれます。そのくせ何も吐き出さない。一旦吸い取った墨を吸い取り紙が吐き出してたら、作品は宮崎弁で言うところの「ちんがらっ」、つまり台無しになってしまいますね。

 私たち老健施設に勤める者にとっても、この考え方は大切だと思います。利用者の訴えを「吸い取り紙のように」聞く。つまり「傾聴」の姿勢ですね。そして「吐き出さない」こと、これは途中で口をはさんだり、異論反論を唱えないといいうことと言えるでしょうか。

 吸い取り紙自体が作品として表舞台に立つことはありません。しかし、吸い取り紙が果たす役割は極めて重要と言えます。私たちが利用者様に提供するケアも、まずは吸い取り紙のように意見と声を聞くことが不可欠なのだ・・・。書き初めの風景を見ながら、そのように思った次第です。

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