老いて突然記憶が良くなる!?

2013年5月10日|

  医学の進歩に伴い、脳に関する研究は日本に限らず世界のいろんなところで行われ、その成果もマスコミで頻繁に報じられる今日この頃です。

 そんな昨今ですが、2007年の510日、「あっ(゜Д゜)!!」と驚く本の第1刷が文春文庫から世に出ました。そのタイトルたるや何ともストレート&ダイレクト、ずばり「脳みその研究」です!誰が研究したのか?というか著者は誰か?それがまたびっくり(゜◇゜)!あの阿刀田
高さんなのです。まさか脳科学者だったとは・・・。

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 主人公の定雄は定年前の会社員。おおざっぱな性格で小さなことなど気にしない。そのためか、人の名前を覚えるのは若い頃から大の苦手でした。その定雄が50歳を過ぎてから、急に名前がぽぽぽーん!と思い浮かぶようになったものだからあら不思議。

 普通の老化だったら逆のはず。芸能人の名前などでも「えーっとあの人よ。誰だったっけ?思い出せない」などとなりがちなものです。しかし定雄の場合は逆。何の苦労もなく名前が口から飛び出てくるのです。あれだけ名前を覚えられなかったこの俺が、一体どうしたというのか?俺の脳に何らかの異変が生じたのか?急に目覚めた能力とうらはらに、失われた能力があるはず、と不安になる定雄は、色々な事を試してみるのですが、どれも変わりはありません。高校の同級生で精神科医の小早川に相談するも、”脳細胞は新しくはならん”と言われてしまい、”まいったなあ”と嘆く定雄。果たしていかなる結末となるのでしょうか・・・?

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 もちろんこの小説はフィクションです。阿刀田 高さんが実際に「脳みその研究」をしたかどうかは定かではありませんが、「さすが阿刀田作品!」とその落としどころの面白さに膝を打ってしまいました(実は上に書いたあらましにもそのヒントは隠されています)。

 この本には表題作である「脳みその研究」の他、「海の中道」「兄弟姉妹(はらから)」「小説ウイスキー教室」「応久礼を捜せ」「裏窓」「狐恋い」「掌の哲学」「雨のあとあるいはエピローグ風の小品」の計9作品が収められています。それぞれ軽重様々、おもむき色々で楽しい本です。510日は文庫本発刊6周年記念日。お読みになってみてはいかがでしょうか。

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