高齢者とインターネット

2011年10月6日|

  「コンピューターおばあちゃん」という歌が、NHKみんなの歌で流れたのは、1981年、今から実に30年も昔のことになります。その頃、コンピューターと言ったら、それはそれは特殊な機械で、特殊な人が特殊な場所で使うものでした。

 インターネットにしても、それ以前は「パソコン通信」と言って、パソコンやワープロ専用機(これももう見かけません)に「モデム」をつなぎ、電話回線でダイヤルアップ。「ピーーー、ガガガガガーーー」とやってつないでいました。真っ暗な画面に浮かび上がる文字ばかりの画面。そこで見知らぬ人とメールや電報のやりとりや、掲示板での意見交換などをしていたのです。

 有料のニフティサーブがパソコン通信の最大手でしたが、電話代はかかるけど、無料で楽しめる、新聞社等がやっているパソコン通信(”草の根BBS“)も色々ありました。ただし、一度にアクセスできるのはたった10人くらいで、つなごうと電話すると話し中、というところもあるなど、今では信じがたい時代だったわけです。それぞれのネット同士はつながっていないから「インター」ネットじゃなかったのです。「オフ会」と呼ばれる集まりでは、居酒屋などで、老若男女が本名ではなく、それぞれのハンドルネームで呼び合うものですから、周囲のお客から変な目で見られていました。

 時は移って現在。それが今や、一家に一台を通り越し、一人に一台、いや一人で何台も、という時代です。そしてインターネットもテレビを凌駕する勢いで成長、普及してきました。928日の日経新聞に「高齢者、ネットでつながる」という記事が載っていました。インターネットの交流サイトやメールなどを使って、家族や友人とコミュニケーションをとる高齢者が増えているとのこと。また、緊急時に備えたり、孤立を防ぐために活用しようという取り組みも紹介されていました。東九州大震災がきっかけになっているとも。

 望むと望まざるとを問わず、これからの私たちはネット社会の中で暮らしていくこととなるでしょう。そしてこのネット環境、これからどんな発展をしていくのでしょうか。スマホでさえも、数年後に「ああスマホね。あんな不便なものもあったなあ」と懐かしがられるようになるかもしれません。

 そんなネット社会の中で、高齢者はどう暮らしていくのか?インターネットは諸刃の剣。家にいながら世界とつながりが持てることは、正しく使えば本当に便利ですが、一歩間違うとトラブルの元凶になりかねないことが指摘されています。特に独居高齢者の場合、自らの判断でクリックをしなければなりません。ネット犯罪はますます巧妙になる中、ネットを利用する高齢者はこれからますます増えていくでしょう。今の高齢者だけでなく、今ネットを使いこなしている若年者でも、これから年をとっていくわけですから。高齢者にも安全、安心なネット社会づくりが急務です。

 また、老健施設内においても、利用者がネットを自由に、しかし安全に使用できる環境を整備する事が求められることになるでしょう。携帯やスマホを忘れて出かけて、とても不便な、そして落ち着かない思いをした方も少なくないはず。それが無い環境で過ごすなんて考えられない、そんな世代が老健を利用するようになるのは、そんなに先の事ではないかもしれません。近い将来の自分自身に関わる問題ととらえて、今から考え、取り組むべき時かもしれませんね。

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