老齢は山登り

2011年10月18日|

  「老齢は山登りに似ている。登れば登るほど息切れするが、視野はますます広くなる」と言ったのは、映画監督のイングマール・ベイルマンだそうです(出典:斎藤茂太「いい言葉はいい人生をつくりる」、成美文庫)。うべうべしきことです。

 百歳の詩人、柴田トヨさんの詩集がベストセラーになっています。百歳という高い頂から眺めた今の世の中はどう映っているのでしょう。表題作にもなった「くじけないで」という作品の中で詠んでいる、「私 辛いことがあったけど 生きていてよかった」という言葉、ずしーんと来ます。

 老健の利用者様から教わることの中にも、時としてものすごい重量を感じることがあります。いつも早食いをされる方がおられたので、それはなぜか?と調べてみたところ、「兵隊にいた時の食べ方が身に染みついているから。いつ死ぬかわからないので、早く食べなければならなかった。いつも命がけで食べていた」という事がわかりました。食べるという行為は、第一義的に生きるためである、という食の本質をどすーんと再認識させられた出来事でした。

 生きとし生けるものは全て、人生というそれぞれの山を登り続ける宿命です。生きている限り、決して下ることはできない。だからこそ、自分より上を登っている人に、上の天候を聞いたり、危険な場所とその乗り越え方を教えてもらったり、必要な道具や心構えを問うたり、そして何よりも、上から眺めた景色がどれだけ素晴らしいか?たとえ辛いことがあるにせよ、人生という山を登ることが、どれだけ楽しく、魅力に溢れているか?それをお聞かせ願いたいと思いました。

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