ブッチャー引退(ToT)/~~~

2012年1月11日|

 いやあ、びっくりしました。「黒い呪術師」ことプロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャーが引退を表明したとのこと。御年とって71。引退することよりも、いまだに現役を続けておられていたことに驚きです。キャリア41年!すごい!!。

 思えばブッチャーの存在無しには、日本のプロレス人気はなかったと言っても過言ではないでしょう。ジャイアント馬場アントニオ猪木が白いマットのジャングルに君臨し、不動の人気を得ていたその頃、ブッチャーは本当に恐ろしく、憎たらしい存在でした。186?、150キロの巨体に似合わない俊敏な動き。レフェリー以外のすべての観客や視聴者にわかるように使いこなす残虐な凶器攻撃。真似したら絶対に突き指してしまうだろう、と思われる「地獄突き」。椅子は投げるわフェンスは壊すわのやりたい放題。馬場や猪木が打ちのめされている画面に食い入るように見いていると、隣の家のおばあちゃんが「こらー!ばばーっ!頑張らんかー!!」と絶叫しているのが聞こえていました。そして悪事の限りをやり尽くしたブッチャーが、満身創痍の馬場や猪木に逆転の必殺技を受けてマットに沈むと、日本国中が歓喜の渦に包まれたものでした。

 その様子は今でもユーチューブなどの動画で鑑賞することができますが、それを見ていてわかるのは、いかにブッチャーが当時のプロレス界を盛り立てていたか、ということです。自分は「最凶」の嫌われ役に徹し、そのことで馬場や猪木がブラウン管の中でさん然と輝くことができたのだと思います。当時は反則攻撃ばかりに目がいっていましたが、今、見直してみると、ブッチャーの攻撃のされ方が非常に優れていて、見ている人の興奮と感動を究極まで高めるような、そんなやられ方をしていたんだなあ、と思います。

 老健を利用されている高齢者の方々でも、昔プロレス観戦が大好きだった方も少なからずおられます。それは、馬場や猪木などのヒーローがいたことはもちろん、その対極の位地に立って嫌われ、憎まれ続けたブッチャーの存在があったからだ、と今頃になって思えるようになりました。

 そんなブッチャー、いやブッチャーさん。最近は骨盤を痛め、尾てい骨の手術も受けたとのこと。彼こそ、だれよりもプロレスの魅力を熟知し、プロレスをこよなく愛していたんじゃないか、と思います。当時は本当に嫌いで、憎らしかったブッチャーさん。しかし、それはあなたがそう思わせるようにわざと振る舞っていたのですね。己の身体を酷使し、ぼろぼろになってしまうまで・・・。

 111日で71になられる大好きなブッチャーさん。嫌って、憎んでごめんなさい。そして何よりも、感動をありがとう!!と遅ればせながら今になってやっと言う事ができます。もし機会がありましたら、日本の老健施設をご利用の上、リハビリに取り組んでいただき、後進の指導に当たって下さるといいとも思います。「プロレスがテレビでやらんようになってさびしい」と嘆かれる高齢者は決して少なくありませんから。

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