研究大会開きました(その11)

2014年5月12日|

【本間達也先生特別講演(8)

 

スライドに「大規模災害時における被災施設から他施設への避難、職員派遣、在宅介護者に対する安全確保対策等について」という厚生労働省老健局発の事務連絡(平成24420日付)を示しています。これには大規模災害時における被災施設から他施設への避難などについて書いてありますが、東日本大震災では、実際に施設ごと避難したところがありました。楢葉ときわ苑という老健ですが、ここは施設自体が原発事故による危険区域のまっただ中にありました。そこで、千葉県の鴨川市にあるかんぽの宿鴨川に施設ごと避難しました。

この楢葉ときわ苑は3.11の地震が起こる前から鴨川市と災害協定を結んでいました。それでかんぽの宿鴨川でケアを継続することができたのですが、これは不幸中の幸いだったと言えます。これは皆さんの施設も、他県の法人と協定を結んでおかないといけない場合もあるということの実例です。原発災害の場合、建物は多少なんともなくても、目に見えない災害です。避難指示が出されると、避難せざるを得ません。皆さんも施設ごと避難をしなくてはならない場合があるということを、頭の中でシミュレーションだけでもしておいてほしいと思います。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

さて、「リスクのABC」という言葉があります。「Aたりまえのことを・・・ Bっくりするくらい・・・ Cゃんとやる・・・」(当たり前のことを、びっくりするくらい、ちゃんとやる)ということです。老健にはさまざまなリスクがあります。この話をもっと詳しく聞きたい方は全老健の「リスクマネジャー養成講座」を是非受講していただきたいといいと思いますが、今日はそのさわりだけをお話します。

「”当たり前のことを、びっくりするくらい、ちゃんとやる”と言われても人がいないし、できるわけがない」という話に必ずなりますが、私は「できない!」のではなく「やっていない!」のだと思います。

それから近年は、すさまじいクレーマー社会とお客様社会になってしまっていますが、なにゆえこんな言いたい放題、した放題社会になってしまったのでしょうか。皆さんも大変苦労をされているのではないでしょうか。「こんなに一生懸命してあげたのに、なぜこんなに言われないといけないのか」と。

 つまりこれは「クレームや事故の本質がどこにあるのか?」を見抜く力を、老健のスタッフがトレーニングしていく必要があります。たとえば「なぜこんなことで文句をいってくるのだろうか?」という場合、案外別のところでうっ積があることもあります。たとえば、洗濯物の取り違いがあって家族が来た時に「これはうちのおばあちゃんの洗濯物じゃないんだけど」と言った際、対応した職員が「ちょっとわからない」と保留にしておくと、もう一度来た時にまた「前も洗濯物が違うと言ってたけど」となり、また「ちょっとわからない」と続くと、さすがに3回目はきれます。そこに転倒などが起きてしまうと大変なことになります。ですからどこにクレームや事故の本質があるのかを見抜く必要があるわけです。また、相手が何を要求しているのかを見抜かなければなりません。お金を要求しているのか、あるいはここで長くみてもらいという受け皿を担保してほしいのか、などを見抜かなければなりません。

risknoabc(1).jpg

(つづく)

« 前のページに戻る

TOPへ