研究大会開きました(その12)

2014年5月13日|

【本間達也先生特別講演(9)

 介護の分野で近年なぜ訴訟が多くなったのか?ということですが、例えば病院の場合、裁判官がよく「臨床医学の実践における医療水準」と口にします。「大学病院ではこのくらいのことはやってるから、大学病院におけるこのミスは落ち度でしょう」、「国立病院では・・・」など、それぞれの診療機関の性格や、その所在する地域の医療環境の特性等の事情などを、それぞれの医療の水準に照らし合わせて落ち度があるかどうかということが判断されます。それに対し、私たちのような医療もあり、介護もありの老健施設の場合、介護に対する「介護水準」はブレが非常に大きいわけです。例えば盲腸の場合、「ここをこうして、こうやって、こうすれば治って退院しますが、おたくではこことここをやっていませんよね」と判断されますが、介護の場合だとそうはいきません。たとえば食事を食べない人に「なんとかして食べさせたい」と食べさせたら詰まらせて「なんで食べさせたか!?」となりますが、ここらへんの介護水準のブレが大きいと言えます。これを未来的にどう解決していくか、ということですが、全老健のリスクマネジャー養成講座や各種研究会、ケアプラン、さらに本日行われる研究発表などがこの現実のブレを最小限にしていくツールです。ケアプランについても、入所前からその人のインテークをしていくことで危険の予知、予見をやっていくことが一つのリスクマネジメントになっていくと思います。

次に「平時の考え方は『足し算』、非常時には『引き算』で対応」というスライドを示しています。災害時には優先順位をきちんとつけることが重要で、優先順位が下位のものはなるべく切り捨て、「何に重きを置くのか」を考えて最低限のことをするという「引き算」の考え方が大事です。

一方、平時には「足し算」の考え方でケアを提供することで、理想に近づけるようなサービス提供体制を構築しようと頑張ることができます。このように状況に応じて頭を切りかえることは、リスクマネジメントを行う上で非常に重要なスキルです。

これに対して組織の基本に「理念なき方便」が蔓延している施設ほどリスク、や事故が多いと言えます。つまり「私の老健はこういう方向に行くのだ」というのがちゃんとしているところは事故が少ないのに対し、「これはしょうがないんだ、これが悪いからこうなったんだ」という方便ばかりが蔓延し、すぐに「花(理念)」より「団子(利益)」をとろうとするところはリスクが多くなります。

heiziwatasizan(1).jpg
(つづく)

« 前のページに戻る

TOPへ