第12回研究大会開きました(その7)

2015年11月26日|

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公益社団法人全国老人保健施設協会(全老健)の東憲太郎会長による特別講演、「老健が担う地域包括ケア」は「(4)老健施設の介護職(他職種協働)」のテーマに移りました。東会長は老健施設における他職種協働は「ピラミッド型」ではなく、「ドーナツ型」が望ましいとして、スライドを用いてそれぞれの特徴を説明しました。

【ピラミッド型=オーダー型(命令型)】

・・・医師を頂点としたヒエラルキー(階層制)。急性期医療モデル=医療保険型

【ドーナツ型=カンファレンス型】

・・・利用者を中心に全ての職員が対等に関与。生活期モデル=介護保険型

 「ピラミッド型では医師が頂点となり、その下に看護師、リハ職・技師などのコメディカル、そして看護助手・介護職などという階層になっていて、下の職種は上からの指示によって働きます。しかし老健は違います。ドーナツ型、他職種協働であり、医師はそのひとつです。医療的な管理をきちんとすればあとは他の役職の役割が大きい、つまり『他職種平等』です」と述べた東会長は、看護師が医師からの指示で動くのではなく、自らの判断で行動できるよう、全老健の各都道府県支部および各都道府県の看護協会とで老健の看護師のための研修事業を計画しているとのことでした。

 最後の「(5)次期改定に向けての課題」については、「もう既に次の改定に向けての議論は始まっています」と切り出した東会長。「介護職員の処遇改善」に関して現在の介護報酬に介護職員処遇改善加算が組み込まれているやり方ではなく、介護報酬とは別に消費税で財源を確保する方式を提言しました。そして「処遇改善は賃金の改善だけでなく、キャリアアップや職場環境の整備も重要」とし、(a)キャリアアップ段位制度、(b)認定介護福祉士制度、(c)介護助手の雇用・・・など介護の専門技術の向上を目指す取り組みを推進することの必要性をスライドに示しながら、「職員が働きやすいよう託児所を作ったり、研修会の費用を出してやるなど、色々なお金を出してやるべき」と言い添えました。

 そして次期改定に向けての「最大のテーマ」と前置きし、「介護保険施設等における医療提供のあり方」をあげ、「ひとことで言うと『老健にもっと医療の自由度を与えて欲しい』ということです。ADLや認知症が悪化するなど、本人や家族、そして老健のためにも良くありませんから、老健から医療機関にやるのは極力避けたいところです。現在老健における所定疾患は肺炎・尿路感染・帯状疱疹の3つですが、将来は6から9疾患へ、もっと増やして欲しいと考えています」と述べるとともに、そのことが「医療費の削減にも貢献する」と言及しました。

 これに伴い「老健施設における『医療の質の担保』が求められます」と述べながら講演最後のスライドとして「老人保健施設管理医師研修制度」のスライドを示した東会長は、「これは私の長年の夢でした」と言葉に力を込めました。この研修制度は一般社団法人日本老年医学会が主催し、全老健が運営に協力するもので、既に今年の6月と9月に東京都で開催されました。その内容は診療報酬における「総合評価加算」の要件である「高齢者医療研修会」(全16時間)を老健施設向けに特化・発展させた全30時間にわたる内容の濃いカリキュラム。平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に向けた、医療の質の担保に関する取り組みとして、この研修会が厚労省の医療と介護の連携に関する議論の俎上(そじょう)に載せられ、研修会の受講・修了が介護報酬上で何らかの形で評価されることに大きな期待を寄せているとのことでした。

講演の最後を「老健施設が今までの事業運営では成り立たなく時代がすぐ目の前まで迫っています。入所も在宅強化型老健施設や在宅復帰・在宅療養支援機能加算算定施設を目指して頑張る、通所リハビリテーションもリハビリテーションマネジメント加算?をとる、訪問リハビリテーションも手がける、というような形で地域から『在宅支援をやってくれる老健だ』と認知されるような老健になってください」と呼びかけて締めくくった東会長に会場からは感謝の拍手がおくられました。

(つづく)

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