ターミナルケア学びました(看護介護部会:その2)

2014年3月5日|

【ホスピス・緩和ケアとは】

緩和ケアは中世ヨーロッパで、「死にゆく人」のケアから始まったそうです。十字軍の遠征で傷ついた兵隊や、疲れた旅人、病人などの安らぎと必要な援助を施すためにホスピスが設けられたとの事ですから、千年くらいの歴史があることに驚きを覚えました。

そして林先生は緩和医療について「ちょっと古いのですが」と前置きし、「緩和医療(Palliative
Care)とは、治癒を目的にした治療に反応しなくなった患者に対する積極的で全人的なケアであり、痛みや他の症状コントロール、精神的ケア、社会的、霊的な問題のケアが第一の課題となる。緩和医療は疾患の初期段階においても、癌治療の過程においても適用される」という1990年のWHOの定義を示しました。この中で林先生は「画期的な事」の一つとして、「積極的で全人的に」関わろうとしたことをあげました。「息を引き取ろうという人に積極的に関わるのはあまり意味のあることではない」とされていた従来の考え方を大幅に見直したのがこの定義だったそうです。また人の辛さを、痛みや日常生活動作の低下などの身体的苦痛だけでなく、社会的苦痛(経済的問題や家庭内の問題など)、精神的苦痛(不安、孤独感など)、スピリチュアルペイン(人生の意味への問い、罪の意識など)など、その人をとりまく全人的な苦痛を捉え、支えていくということについては、「これは今も変わりません。私自身とても大事にしていることです」と強調しました。

001IMG_6428.JPG

これに続き、2002年のWHOの緩和ケアの定義を、スライドを用いて「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである」と紹介しました。この特徴の一つは、1990年の定義がターミナルの人が対象だったのに対して「生命を脅かす疾患に直面している患者とその家族」としたこと。つまり「治らない人、ターミナルの人だけでなく、良くなるかもしれない人も色々な問題があります。病気になって最初から痛くてたまらない人もいます。治療のために仕事も辞めないといけなくなったりして一気に家族の生活が乱れる人もいます。そういう人たちやその家族にはじめから関わるのが緩和ケアです」と、対象の幅がターミナルの人に限定しない点を強調しました。

もう一つの大事な特徴として「予防も入ってきました」と林先生。「緩和医療というと、痛みが出たり、息苦しさが出たらそれを和らげるというように、何か問題が出てから対応するといった後手後手のものではなく、予防もできるのです。例えば癌が骨に転移すると痛みが出たり、骨折する人もいますが、それらの身体の症状が出る割合を減らす治療法もあります。また身体面だけでなく、『こういう症状の人たちは、心の辛さが強くなりがちだ』とか、『この患者さんがなくなるとご家族はとても辛い心の状態になるな』ということもわかってきています。そこでそういう人たちにあらかじめ関わって、心の辛さやショックを和らげるというようなこともしています。このように、死を間近にした患者さんと家族を早くから見ていくことが大事です」と、患者本人だけでなくそのご家族も、そして心身両面をサポートしていくという説明に、受講者は緩和ケアの奥深さを知りました。

そして林先生は、医師や看護師、介護食、リハビリスタッフ、栄養士、ソーシャルワーカーなどたくさんの専門職が輪になって患者と家族を取り囲んでいるスライドを示し、「緩和ケアは決して一人ではできません。みんなが専門性を持ち寄って患者や家族の暮らし全般を支えていくことが重要です。また大変な時やうまくいかないときに、スタッフ間で苦労を分かち合える仲間という意味でも大事です」と、専門性を持ち寄るとともに、苦労と喜びを共有できるようなチーム医療が大切だと、会場を見渡しながら言い添えると、受講者は身を引き締めて聞き入っていました。

002IMG_6437.JPG
(つづく)

« 前のページに戻る

TOPへ