研修会開きました(栄養給食部会、その2)

2013年7月30日|

【食の認知について】 

 職の認知(分類)は次の通りです。

1)認知期(先行期):食物が口腔に入る前の時期で、何をどのくらい、どのように食べるか決定し、行動する段階。

2)咀嚼期(準備期):食物を捕食し、続いて咀嚼してから嚥下運動が行われるまでの段階

3)咽頭期:反射運動により、食塊を咽頭から食道へ移送する段階

 

 この中で、「認知期」では、目で見て食べ物の固さや味や温度、臭いを情報としていれて「ああ、これは○○○○と言う食べものだ。どのようにして食べればいいか、一回量は?早さは?思い切り噛まないといけないか?口を大きく開けないといけないかなどと考えるわけです。そして無意識に唾液が出てきますが、これは口に入れる前に出るのです。これは大事なことなので覚えておいてください。

 認知の前提として、見えるのか、においがかげるのか、記憶にある食べ物と対比してこれは固いぞ、甘いぞ、ということがわかっているのか?を考えないといけません。認知ができないと、食べ方が全く異なってくるのです。例えばフランクフルトソーセージなどは、中に箸が入ってるから、一気に噛んではいけません。やさしく食べて引き抜いて、という食べ方はこの段階でやるのですが、それができないと大変です。認知できないと、柔らかい食事を強く噛んで歯を折ったり、舌を噛んだりする可能性はないか?と思います。

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【味の認知】

 味の認知は一言で言うと味覚ですが、味覚は生理学的には「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」が基本四味とされ、「旨味」を加えて5種類が基本味となっているという本もあります。最近6番目の味がアメリカで発見されて認定されるかもしれないとのことです、今日は4味だけで話をすすめます。

 

【舌などの味覚感受性】

 ベロには色んな感覚を感じる場所があり、それを神経が頭に伝えます。また軟口蓋・喉頭蓋・食道上部内面にも味覚受容体は存在します。これがどういう味を感知するかはまだわかっていません。ビールののどごしはここにあると思います。それぞれの味は別々の神経で脳の中の方に伝達されます。食べ物全体が口の中に入ると、役割分担して情報が頭にいきます。甘酸っぱいものは2つの場所、2つの神経から頭にいって合成されて「これは甘酸っぱい」という一つの味として伝えられます。

【唾液の役割】

 食べる前に唾液が出ると言いましたが、固形物が味として感じるには溶けないと味細胞に感知されません。溶けるということは唾液が出ているということです。角砂糖を甘く感じるのは溶けた部分が味細胞に伝わって甘味として伝わっているということです。唾液が少ないということは飲み込みにくいということもありますが、味も感じにくいということでもあるわけです。

 

【第1次味覚野、第2次味覚野】

 味覚情報は延髄を介して頭に上っていきます。そして視床を通って前頭葉の第1味覚野にいきます。ここで味の質や強さを判断しまする。これは側頭葉のすぐ上の前頭葉の下の方です。

  2次味覚野は咀嚼や味覚などの情報が統合され、食物の認知や好き嫌いなどが判断されます。そのすぐ横に扁桃体がありますが、それと海馬が記憶情報になっているので、頭の中にある食べ物の情報、例えば「あれは肉まんだった」という情報と目で見た情報、そして肉まんの臭いがして「あ、これは熱いぞ、やわらかいぞ、だからこうやって食べよう」という命令が生まれるのです。

 この海馬がアルツハイマー病では最初に萎縮します。その前に扁桃体(記憶の脳みそ)があります。花王健康科学研究会によれば「食行動を決定するのは、その食事の味や環境、雰囲気などを記憶している扁桃体が重要な部分を担っており、(海馬や)大脳辺縁系や大脳連合野とも連携して、過去の記憶や情報と照合して摂取して良いかを判断する。このような統合過程を『認知』といい、視床下部は扁桃体や大脳からの情報を受けて、食欲、飲水、性行動、体温、情報、内分泌といった働きを調節する。このような脳での情報伝達の連携プレーにより、食行動の認知が行われ、食物に対する『おいしさ』が自覚される」とのことです。「あれが食べ物だ。食べよう。甘いぞ、・・・」というのは難しく複雑な過程を経てすぐ答えている。

 これが全部認識されていないといけないのですが、認知症の人は認知できているのでしょうか?食の認知、味の認知が合致して「美味しい」となるのは、認知できることが前提です。認知症の人が私たちと同じように判断できているのかはまだはっきりわかっていません。

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(つづく)

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