「高齢者施設での看取り」学びました(看・介部会:その2)

2015年5月19日|

 まず「お家に帰ってみましょうか? 看取りケアの一症例を通して」と題し、社会福祉法人慶明会グループホームサンメリーの壱岐育子さんが症例発表を行いました。

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 これは平成23年と25年に1名ずつ看取りを実施している同ホームが、看取りの後に行った振り返りのカンファレンス(会議)の中で、「家につれて帰れなかった」という反省が上がり、看取り直前に帰宅支援を計画、実施した症例でした。

3回実施したカンファレンスでは、「本人の望みは何か?」を、家族の意見も取り入れながら話し合い、「家に帰りたい」とよく言われていたことや、「10年くらい家には帰っていないが、帰ってみたら色々思い出すかもしれない」という家族の意見を受け、「短時間なら大丈夫」という主治医からの外出許可も得て、自宅と入院中の妹のお見舞いに行くことを決定。介護職員2名、看護職員1名、そして家族が同行してもらい実施したとのです。自宅近く着いた際、周囲の街並みが変わっていたこともあり、「どこなのここは?」と不安げだったものの、玄関前に着くと隣の店を懐かしく思い出したそうです。

さらに入院中の妹を見舞った際には、顔を見るなり「あんたこんなところで何をしてるの?」と声を掛け、久しぶりに大声で笑って話している様子がスライドで紹介されました。姉妹で昔話に花が咲かせている様子をほほえましく感じながら「貴重な時間を共有することができた」と帰宅支援実施の手応えを説明しました。

認知症のあるその利用者は、その後家に帰った事は忘れてしまったものの、「昔はよく出前を頼んでいた」と回想されたり、友人の名前を口にして気遣ったりするといった、それまでにない変化が見られたそうです。

 そして帰宅支援実施から1か月半後、職員と家族が見守る中、その方は眠るように穏やかに息を引き取ったとのこと。家族から「自分たちでは家に連れて帰れなかった。本人もきっと満足していると思います。ここで看取ってもらったことに感謝しています」との言葉をもらった壱岐さんは、自分たちこそケアに携わらせていただいた事に感謝するとともに、「帰宅支援はその人の想いに寄り添うものであり、その人の人生の一部を共感できるもの。看取りの状態である前から個人個人の想い入れのある場所へ一緒にでかけることの必要性を実体験することができました」と帰宅支援の大切さを強調しました。

 この取り組みを契機に、現在グループホームサンメリーでは個別ケアの一環として自宅訪問や知人宅訪問、屋外レクレーションなどに積極的に取り組んでいるそうです。壱岐さんは「私達はホームを頼って来られた方々が、家庭的な雰囲気の中でその人らしく穏やかに笑顔で生活を送られることを願っています。そして今まで培ってきた認知症ケアの専門性を地域の中で生かし、グループホームが地域の活動拠点としての価値を高めていけるよう努力していきたい」と今後の抱負を語っていました。

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(つづく)

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