「高齢者施設での看取り」学びました(看・介部会:その3)

2015年5月20日|

 次の症例報告は介護老人保健施設ひむか苑の渡邉愛子さんによる「ひむか苑における『看取り』の実際」。施設の紹介、そして20124月から看取りの対応を強化する観点から算定要件と評価が見直されたターミナルケア加算の概要について触れた後、同苑でこれまでに行ってきた看取りの取り組みが報告されました。

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 同苑では平成236月に「看取り」プロジェクトチームが発足、翌244月に「看取りケアマニュアル」を作成、同5月に全職員を対象にした看取りの研修会が行われ、同10月に1例目の看取りが行われたそうです。今回の症例報告は、一人の女性入所利用者(Aさん)が永眠されるまでに実施された看取りの様子が紹介されました。

主治医から家族への「回復の見込みはないと思われる」という説明が行われ、家族の理解、納得、承諾を得た上で、同苑の看取り指針に従い本人や家族に配慮したケアが進められました。「環境」、「栄養食事」、「排泄」、「清潔」、「精神的支援」、「医療・疼痛緩和」などを盛り込んだ「看取り看護・介護計画書」を作成。徐々に状態が落ちてくる様子を克明に観察、記録し、医師がその状況を丁寧に説明。看護師も家族の不安や意向に耳を傾け、「看取りを希望される利用者、家族の支援を最後の時点まで継続することが基本であり、それを完遂する責任が施設およびその職員にはある」という考えのもと、(1)観察しやすいホールに近い個室で対応、(2)看取り期のケアプランを職員全体で共有、(3)医師、栄養士、リハスタッフ、相談員など多職種と機会あるごとに情報共有し連携をはかる、(4)家族への密な情報提供、(5)家族に正しい情報を伝えられるように記録をしっかりすること・・・などといった関わりが続けられていきました。

そして家族に見守られながらAさんは永眠。正面玄関で大勢の職員が見送る中、家族からは「本当に大満足いい人生でした」と笑顔でお礼の言葉があり、さらに後日「今度は私がここでお世話になりたいくらいです」とも言われた渡邉さん。「亡くなれば裏口からひっそりと見送られる病院と、表玄関から多くの職員に見送られる施設と、あなたはどちらがいいですか?」と会場を見渡し問いかけました。

 「看取りケアは特別なことではなく日常的なケアの延長線上にある」として、住み慣れた場所で、馴染みの職員に囲まれて尊厳と安楽を保ちながらやすらかな終末を迎えられることを目指し、職員が連携して取り組んでいるひむか苑の看取りケアの症例報告を、参加者は興味深く聞き入っていました。

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(つづく)

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